2019/04/14

ドナルド・キーンの音盤風刺花伝

 2月に96歳で亡くなられたドナルド・キーンは、日本文学および日本文化に関して多くの著作を生み出したが、彼はクラッシク音楽愛好家でもあり著作もある。「ドナルド・キーンの音盤風刺花伝」(1977年、音楽之友社)は、彼の最初の音楽エッセイ集、今も音楽之友社から発行されているレコード芸術の連載をまとめたもの。

Dsc05646-1b

 16歳のとき叔父から贈られた蓄音機で家にあったレコードを聴き、カルーソー(イタリアのテノール歌手)の歌声に魅せられオペラ好きとなり、その後メトロポリタン歌劇場でオペラの舞台上演を見るようになる。大学を卒業し海軍に入隊しハワイに配属され、その後ニューヨークに戻りさらにイギリスに渡りそこでコベント・ガーデン歌劇場へ足を運ぶようになる。そこでいまや伝説の歌手となったマリア・カラスの「ノルマ」や「トスカ」を観てその力強い歌声と存在感に強い印象を受ける。その後も様々なオペラ公演を観つづけ、多くのレコードを集め、それぞれの公演と歌手の印象を語っている。その歯に衣着せぬを語り口は、ちょっと辛辣だが素直でもある。

  音盤風刺花伝は、ドナルド・キーンの長い音楽鑑賞遍歴の中から音楽会や出演していた歌手、集めたレコード、さらに音楽を取り巻く話を語っている。なにしろ10代のころからクラッシク音楽に親しんでいるだけあって、いまでは神格化されたり、その逆に名を見ることが少なくなった音楽家の全盛期の話は、じつに興味深く面白く、これをきっかけにしてYoutubeでマリア・カラスのノルマを探してしまったほどだ。

 

| | コメント (0)

2019/04/07

Y3・SS

 写真文学散歩は、それぞれの写真の撮影データを記載している。たとえば続写真文学散歩の太宰治「斜陽」のページは伊豆半島からみた富士山の写真にオリンパスレフ・F5.6・1/200・Y3・SSとある。オリンパスレフはカメラ名、F5.6・1/200は絞りとシャッタースピードだが、Y3・SSとは何だろうか?

Dsc05634-1b

 Y3は、レンズに付けるフィルターの種類を示している。父親がモノクロフィルムで写真を撮るとき、レンズに黄色いフィルターを付けていたことをかすかに覚えている。そのフィルターはY1,Y2,Y3と数字が大きくなるほど色が濃くなり、モノクロ写真のコントラストを強調する効果がある。SSはフィルムの感度を示している。かつてフジフィルムから販売されていたモノクロフィルムは、ネオパンS、SS、SSSの3種類あり、その感度はISO50,100,200であった。つまりY3・SSは、レンズに濃い黄色のフィルターを付けてISO100のフィルムで撮影したことを表しているのだ。

 デジカメは、ISO感度はカメラ本体で大きく可変できるし、コントラストも写真ソフトで調整できるのでフィルターを意識する機会は少なくなった。フィルム撮影用のフィルターは、今はまだメーカーのカタログに載っているが将来はどうなるのだろうか。

| | コメント (0)

2019/03/30

写真文学散歩

 「文学散歩」本は、作品とその舞台となった地の解説に加えて、取材した当時の町の様子を記録している。そのため文学の話題に限らず、古い町を知る資料として役立つ。そこに写真が入っていれば、さらにその資料価値が高まる。

 

Dsc05626_1b

 

 「写真文学散歩」(大竹新助、現代教養文庫、1957年)は、タイトルにあるように文学作品のゆかりの地を写真とともに紹介している。各文学作品を見開き1ページとして半分で作品紹介、残り半分を写真としている。著者である大竹新助は写真家でもあり、写真構図がよく撮影データも記載している。この本は、もともと図書新聞に連載されたものを一冊にまとめたものだ。

 

 志賀直哉は、序文で”この本は後になる程、その価値をまし、皆から喜ばれ、大切にされる本だと思ふ。露伴の五重塔の如き、大竹君が写した後で焼け失せた”と述べている。まさしくその通りで、幸田露伴の小説「五重塔」のページではモデルとなった谷中天王寺の五重塔の写真を収録。この五重塔は1957年(所和32年)に焼失したが、これ以外にも、いまや失われた昭和30年前後の日本の風景を数多く記録している。

 

 上に載せた写真は夏目漱石「三四郎」のページ。坂道に沿って並ぶ家々はみな木造、はるか遠く木々の上にわずかに五重塔の最上部が見える。約60年前、千駄木にある団子坂に立った人々はこのような景色を見たのだ。「写真文学散歩」には、このような写真がたっぷり詰まっている。文学ファンだけでなく昭和の町に興味のある人におススメだ。なお続編も発行されており、そちらの序文は伊藤整によるものだ。

 

| | コメント (0)

2019/03/24

胴吹きサクラ

 桜の開花宣言がされた翌日、買い物ついでに大通りのサクラを見てきた。目で枝を追うとところどころ咲いているが、まだツボミの1割も開いていない。ところが目を下に転じると幹から直接生えたように咲いた花がいくつかある。しかもそこにあるツボミの6割ぐらいがすでに開き若葉も出ている。


P3222221-2b


 以前、天気予報の豆知識で解説していたが、枝先でなく幹に花をつけるのを胴吹きと言うそうだ。これは勢いあり余って咲くのかと思ったら、じつはまったく逆で、古木になると見られる現象で木の勢いが衰えたことを示すとのこと。さらにヤマザクラの寿命は約300年ぐらいあるが、ソメイヨシノは60年ぐらいしかないそうだ。

| | コメント (0)

2019/03/21

住宅街のフキノトウ

 先日、住宅街のブロック塀と電信柱に囲まれたところでフキノトウを見かけた。遠くから見たときは、造花のようなものが地面に落ちているのかと思ったが、近づいてみたら本物のフキノトウ。しかも大小二輪だ。誰かが育てているのかそれとも自生したものか、なぜここにという疑問を持ちながらもしばし見入ってしまった。
P3052184_1b_2


 早春の信州で山菜採りをしたとき見かけたのか、もしかしたら図鑑で見たのかもしれないが、フキノトウといえば北国に春が来たことを示す野の花のイメージがある。まだ少し残る雪を割るように地面から出てくる薄緑のツボミの姿だ。あらためて植物図鑑で調べたら、フキは日本全国に広く分布しており、山地や平野の道ばたにはえるとある。となれば住宅街にあっても不思議はないようだ。

| | コメント (0)

«次々生まれる略語に悩む