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2006/01/21

古書との出会い:たべあるき東京横浜鎌倉地図(山本嘉次郎)

 前回の東京新地図につづいて、もうひとつ地図本を紹介しましょう。

 「たべあるき東京横浜鎌倉地図(山本嘉次郎:発行昭文社、昭和47年)」は、昭文社最初のグルメマップにしてベストセラーとなりました。著者は、映画監督・脚本家にして美食家だった山本嘉次郎、イラストは永井保、題字レイアウトは伊丹十三。

 外観は、昭文社得意の折りたたみエリアマップの格好をしており、どうみても本というより地図ですし、著者も表紙では”この本、いやこの地図”と書いています。ところが、あとがきになると”しかし、この本(あえて地図とは言わない)”となっており、地図か本か悩むところですが、ここでは地図本として話をすすめましょう。

 著者が、この本にこめた思いを語る文章が、”安くて、うまいものを食う法”という囲み記事にありますので簡単に紹介しましょう。

 安くてうまいものを食うコツは、”1.なるべく古い店であること、2.古い建築の店である、3.建築は古くても掃除がゆきとどいている、4.女の客が多い、5.旺盛な食欲を持つ”とあります。江戸時代からの老舗でなくても古い店であれば、店の土地も建物も自前のことが多いので、新しいビルなどにできた店より経費が少なく、その分料理も安く提供できるだろう。著者のお店えらびは、このような考えをもとにしています。

 そして”1000軒ほどの食い物屋を紹介したこの地図には、安くて、うまい店が、何十軒、何百軒か含まれている筈である。私は、わざと、その店を指摘しなかった”とあります。

 たしかにこのグルメマップには、地図・店名・主なメニューの金額・営業時間・住所電話番号などは載っていますが、ミシュランにはじまり、多くのグルメガイドブックが掲載している星三つなどのお店の評価をまったく記載していません。

 そのことについて、著者は以下のように述べています。

 ”ウッカリそんなことを書こうものなら、たちまち餓狼の巷とかしてしまうからである。小さな店に、客が満ち溢れ、ふだんのお得意客の迷惑になるばかりでなく、、、つぶれてしまった店も何軒か知っている”。

 さすがに昭和を代表する美食家です、安易なグルメガイドの危うさを十分知り尽くした大人の言葉です。

 山本嘉次郎さんが昭和東京のグルメ界に与えた影響は大きかったようで、十数年前ですが、日本橋にあったレストランで”山本嘉次郎先生推薦の店”と書かれた看板を見たことがありました。

 グルメマップのベストセラーを誇った「たべあるき東京横浜鎌倉地図」も、このごろはあまり見かけません。もし古い本箱の隅などに忘れられているものに出会ったら、昭和東京本の一つとしてもう一度読むことをおすすめします。

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