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2006/10/01

私説東京繁昌記(小林信彦・荒木経惟)

 ここ一週間、私説東京繁昌記(小林信彦、写真:荒木経惟、ちくま文庫)を読んでいた。この本の作者二人については説明不要だろう。小林信彦は、小説・コラム・エッセイなど数多くの作品を書いており、荒木経惟はアラーキーとして写真界で大活躍している。この二人が、1983年5月から1984年3月まで東京の町を歩き、作り上げたのが私説東京繁昌記だ。この町歩きは1984年5月まで雑誌「海」に連載され、その後、単行本が中央公論(1984年)、筑摩書房(1992年)から発行され、現在はちくま文庫版が入手可能だ。

 小林信彦は、変わりゆく東京を評して「町殺し」という言葉をたびたび使うが、この本にそのルーツがありそうだ。「町殺し」という言葉が、ある建築家による造語であることを、この本で明らかにしている。日本橋両国という東京の下町で生まれ育ち、その後、山の手各地に移り住んだ小林信彦は、戦災、東京オリンピック、そしてこの本が書かれたバブルによる東京の変化をまのあたりに見てきた。

 今、バブル期の開発と破壊の混乱を語るのは簡単だろうが、20年前のバブル真っ只中であった1984年当時に、それをズバリ「町殺し」と言っているところが小林信彦の凄さだろう。あれから20年、いま再び町なみが大きく変わりつつあるが、そこにはどのような言葉があるのだろうか。

 私説東京繁昌記の最初の版(1984年)は、10章+終章の全11章となっているが、1992年版は、「八年ののち」の章をあらたに加えて全12章となり、さらに新しい写真が追加されている。文庫本は、この1992年版をもとにしており、解説は吉本隆明によるものだ。

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コメント

この本は、持っていると思っていましたが、どう探しても出てきませんでした。しかし、池波さんの本を紹介くださったエントリーでも言えることですが、こうして、版による内容の違いを書いてくださるのは本当にありがたいです。これを知りませんと、ついつい文庫…文庫…となってしまいますので…。いつもありがとうございます。

投稿: masa | 2006/10/04 01:13

 私説東京繁昌記(文庫版)はあとから出ただけあって、章も追加され、小林信彦のあとがきも増えて、吉本隆明の解説もついているなど内容が充実しています。ということで、この本は文庫版がお勧めでしょう。ただし文庫版(たぶん筑摩版単行本も同じだと思いますが)は、写真を選びなおしていますので、写真を気にする場合は最初の中央公論版も要確認となります。こうして本がどんどん増えていくのが悩みですね・・・。

 池波正太郎の「江戸古地図散歩」(新書版)は、表紙の写真だけを見ればこれが本当にあの池波正太郎の本?というデザイン(粋とか渋さがまったくない)ですから、手に取る人は少ないかも。でも中身は楽しめますので、こんどお会いする機会がありましたら実物をお見せします。

投稿: じんた堂 | 2006/10/04 18:03

こんにちは。
チョートクさんのところ、masaさんのところを経由してきました。いまさらながらですがコメントを。
この本が好きで、中央公論版、筑摩書房版、文庫版と所有していますが(海外にいる関係で、今手元にあるのは文庫のみですが)、写真が異なっています。都度写真を選びなおしているようです。

それでは。

投稿: dtk | 2006/11/28 13:17

dtkさん、コメントありがとうございます。
やはり筑摩版単行本も写真を選び直していたんですか!同じ本なのに、新装改版するたびに少しづつ手を加えるところに、小林さんの思いが表れているような・・・。これからも、よろしくお願いします。

投稿: じんた堂 | 2006/11/30 00:32

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