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2006/11/11

ずばり東京(開高健)

 「ずばり東京」の前白は、”・・・小説が書けなくなったらムリすることはないよ。ムリはいけないな。ルポを書きなさい。ノンフィクション。これだね。いろんな友人に会えるから小説の素材やヒントがつかめるし、文章の勉強になる”」ではじまる。既に芥川賞をもらっていたがスランプに陥り小説が進まなかった開高健に向かって、武田泰淳氏が贈った助言である。

 ウイスキーと釣竿をもって世界中駆け回っていた印象がいまも残る開高健は、それ以前、小説に加えて数多くのルポルタージュ作品を残している。「ずばり東京」は、開高健がルポルタージュの世界へ向かった初期の作品で、1963年から週刊朝日に連載された。このルポのあと開高健はベトナム、ナイジェリアやアラブの戦乱の地をめぐり、やがて釣りと自然の世界へ向かった。

 「空も水も詩もない日本橋」ではじまるずばり東京は、回がすすむにつれて「深夜の密室は流れる」「ぼくの”黄金”社会科」「総選挙は”銭の花道”」などその取材対象は深くなっていく。さらに開高自身も書いているが、独白体、会話体、子供の作文、擬古文、講談などさまざまな文体を試みている。

 古書好きな人におススメするのは「古書商・頑冥堂主人」の回だ。当時の「古書会館」(まだ木造バラック2階建て)で行われた古書市の話しだ。現在は、入札値のメモを封筒に入れると聞いているが、昔は市によってそれぞれ方法が違っていたようで、その方法が詳しく書かれている。

 ”板の間ザブトンを敷いて古本屋がすわっていて、口ぐちに値を叫ぶ。・・・ランニングにパンツ一枚という格好でひっきりなしに値を叫ぶのが振り手である。値のついた本をかったぱしからポーイ、ポーイとブン投げるから振りというのである・・・一般書会の市はこれだった”。

 ”洋書会は、さらに近代化されている。板の間へ連結式のレールを敷き、そこへ四角の盆をのせ、そこへ本をのせてゴロゴロころがしていくのである。値はいちいち叫ばないで、封筒へメモを入れる。それを集めて・・・最高値をつけた人に本をおとす”とある。

 さらに古典会の話しがつづくが、その内容は、この本を読んでの楽しみに残しておこう。これが実に優雅な方法なのだ。

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