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2008/01/11

フィールドワーク:尾根を行く川

 masaさんのブログで紹介されていた「川の地図辞典」(菅原健二、之潮社)を岩波ブックセンターで購入してきたので、早速、目黒区のページを開いてみた。

8dsc04078_2 以前から目黒区青葉台にある、西郷山公園の滝が気になっていたのだ。夏になると公園の中ほどの水路から水を流し、公園下へ滝のように落ちている。大正・渋谷道玄坂(藤田佳世、青蛙房)によれば、この地は西郷従道の屋敷跡で、かつて滝があったことが書かれている。また目黒区のホームページによれば、西郷従道邸は三田用水の水を引き込んでいたとある。

 西郷山公園付近を歩いた人は分かると思うが、ここは富士山を見ることが出来るほどの高台にあり。その入り口は旧山手通りに面し、急斜面に沿って下ると目黒川に近い菅刈公園に至る広い地域だ。さて、三田用水はどこを流れていたのだろうか?

 「川の地図辞典」P182、183を開いたら、その答えがあった。

 三田用水は、国道246を大和田坂上付近で横切り、旧山手通りに並行して走り、西郷山公園の入り口付近で旧山手通りに合流している。ということは、以前、”Y字路の秘密”で紹介した左側の道そのものだ。三田用水は、こんな尾根のような場所を通っていたのだった。この事実は、山の手に住む人にとってはあたりまえの事かもしれないが、日頃下町の川や堀に親しんでいる者には目からウロコが落ちる思いだ。下町・低湿地では、水は、その地域で一番低いところを流れているイメージがあるので、川は谷間を行くものと思い込んでいたのだ。

 しかし、用水や上水となると川を取り囲む地形は全く違う。長距離かつ広範囲に水を分配するためには、尾根のようになるべく高い所に水路を作り、そこから低地向かって流すのが合理的だし自然だ。ヨーロッパにある谷間を横切る石で組まれた水道橋の景色も、同じ発想によるものだろう。川というのは、その成り立ちと用途に応じてそれを取り囲む地勢は大きく違うようだ、このあたりを調べはじめるとなかなか奥深いものがあるかもしれない。

8dsc04239 以上のことをふまえて、もう一度、「川の地図辞典」P182,183とこのページの写真を見直してみよう。カメラは西郷山公園の北側入り口付近、ちょうどY字路の交点に立ち北へ向いている。この場所は、”Y字路の秘密”で紹介したように二重Y字路で、画面左側の先に急な下り坂があり、カメラの立つ場所は坂の頂上となる。さらに画面に写る左右の道路を比べると、右側の道は先のほうまで平坦だが、左側の道は奥にいくほど高くなっている。すなわち左側の道は、この付近では坂の頂上付近を、画面の奥から手前に下る尾根のような地形であることが分かる。

 「川の地図辞典」で位置を確認すると、この左側の道こそ三田用水そのものだから、川は奥から手前に向かって尾根に沿って流れていたと考えて間違いないだろう。

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コメント

さっそくフィールドワーク…とは、さすがにじんた堂さんですね。しかし、エントリーの内容も、川の地図辞典の指定ページを見ながら拝読しますと、いかにも分かりやすいですね。また、川と用水とは性格が異なる…とのこと、なるほど…です。
ところで、このエントリーにリンクを張らせていただきました。

投稿: masa | 2008/01/12 04:27

じんた堂さん、拙ブログにもリンクさせていただきました~!!「用水や上水となると川を取り囲むの地形は全く違う。長距離かつ広範囲に水を分配するためには、尾根のようになるべく高い所に水路を作り…」、そうなんですよ~。かなり上流のほうから、等高線に沿って水路を引っ張ってくることになりますよね。そういう痕跡が、武蔵野台地のなかにいっぱい見つけられるんでしょうね。

投稿: わきた・けんいち | 2008/01/12 08:31

>等高線に沿って水路を引っ張ってくることになりますよね。
基本的に尾根道に上水や用水路が設けられているようですが、地形的に谷越えをしなければいけない箇所を水道橋ではなく、井戸に水を溜めてサイフォンの原理を用いて揚水していたと云う記述を読んだ事がありますが、何に書いてあったのか、残念ながら失念してしまいました。

投稿: iGa | 2008/01/12 11:28

都市の用水にしても、農村の農業用水にしても、ポンプのない時代にいかに巧妙に水を送っていたかということを知るたびに、ぼくは感動的してしまいます。そういう仕組みを知ること、でぉればブラックボックスでなく、目に見えるようなかたちにすることは、巡り巡って省エネルギーにも通じると思うのですが。
このエントリーを、「同時多発エントリー」の一環として、ぼくのブログにリンクさせていただきました。

投稿: 玉井一匡 | 2008/01/12 17:29

先週末、この辺を撮影しておりまして、西郷山からは落ちる陽と、雲が、素晴らしい夕景をつくっているのが見えました。
三田用水が尾根道に沿って在ったことは、平行する谷である渋谷川とを結ぶ、横のラインをも可能にすることになりますから、地形と水路の3次元的な活用に感動すら覚えます。
じんた堂さんのこのエントリーを拙ブログにてリンクさせていただきました。

投稿: M.Niijima | 2008/01/12 19:47

masaさん、
いつもコメントありがとうございます。
やっとフィールドワークの入り口に立ったようなレベルですが、それでも日頃見慣れた東京下町(低湿地)の川と山の手を行く川の違いを認識した次第です。

投稿: じんた堂 | 2008/01/12 22:27

わきたさん、こんばんは、
わきたさんのスーパーグレー塊に圧倒されています、masaさんや皆さんとのコラボレーションが素晴らしいですね。

投稿: じんた堂 | 2008/01/12 22:51

iGaさん、こんばんは、
サイフォン、小学校か中学で実験したのを思い出しました。たしかに水路に使用した例があったような・・・、しかし私もどのような内容だったか思い出せません。もしかしたら子供達の方が知っているかも。

投稿: じんた堂 | 2008/01/12 22:58

玉井さん、こんばんは、
古代ローマの水道橋、砂漠の地下水路などが、今も機能している話しを聞くと、東京の古い水路について考えさせられますね。これからも、よろしくお願いします。

投稿: じんた堂 | 2008/01/12 23:33

Niijimaさん、こんばんは、
代官山から近くてあの景色ですから、西郷山公園がTVドラマのロケ地として人気があるのもうなずけますね。これからもよろしくお願いします。

投稿: じんた堂 | 2008/01/12 23:38

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