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2009/07/22

僕の東京地図(安岡章太郎)

 以前、「麻布霞町の田舟」で少しふれた「僕の東京地図」(安岡章太郎)を紹介しよう。

Bokuno_tokyo_chizu_2 じつは最初は、「僕の東京地図」を、古書として紹介するつもりだったが、三省堂のオンライン検索で調べたら、まったく同じタイトル・著者名が二冊ヒット。しかも文化出版局版は絶版となっていたが、世界文化社版は、現在も入手可能となっている。そこで今回は、これら2冊の本の違いを含めて、「僕の東京地図」を、本のこぼれ話しとして取り上げてみたい。(写真は、左が文化出版局:1985年、右が世界文化社:2006年)

 まずは、現在も新刊が入手可能な世界文化社版「僕の東京地図案内」(2006年6月発行)を中心にして、文化出版局版との違いをみてみよう。

 トビラに”本書は「僕の東京地図」(文化出版局、1985年)のミセス連載分を軸に、配列を掲載順から年代順に変え、加筆し、大幅に写真を加えて構成したものです”とある。文章に大きな変更はないが、新たに追加された写真は、明治・大正・昭和の東京の各地のすがたを写したもの、すでに文化出版局版を持っている人も楽しめる興味深いものが多い。

 それでは文化出版局版の「僕の東京地図」は、もういらないかとなると、そうはいかないようだ!

 じつは、文化出版局版「僕の東京地図」(安岡章太郎)は、雑誌ミセスに昭和59年1月~12月まで連載された「僕の東京地図」と、婦人画報に昭和58年1月~12月までに連載された「曲がり角の散歩」を一冊にまとめたもの。たとえば、以前紹介した”志賀家の麻布霞町の田舟”などの話しは、「曲がり角の散歩」に含まれており、文化出版局版でのみ読むことができるのだ。

 さて、この本は、東京のどこを語っているのだろうか?

 取り上げている東京の町を、各章の表題からひろってみると以下のようになる。

 小岩・市川・江戸川、青山、浅草・吉原、道玄坂から松見坂へ、下北沢、九段・靖国神社、赤羽・荒川、隅田川周辺、上野界隈、神田、大森、多摩川河畔。

 面白かったのは、小岩・市川・江戸川と道玄坂から松見坂。軍人であった父親の転勤で小岩・市川に住むことになった安岡章太郎は、まだ幼稚園に入った年頃だが、その頃の思い出と共に語られる町の様子は、年代はまったく離れているが、どこか私の遠い記憶と重なり懐かしい気持ちにさせてくれる。

 戦前にできた東京郊外の町を歩くと、こんな所に立派な料亭や屋敷があることに驚くことがある。地元の古い人に聞いてみると、じつは軍隊があったころの名残で、ここに将校や退役軍人が住んでいたとの話しがある。市川での安岡家は、まさしくそのような中にいたのだろう。

 道玄坂・松見坂の名も、懐かしい。数年前までこの近くのオフィスに通うため、毎朝、渋谷駅から松見坂へ向かうバスに乗り、帰りは道玄坂を下り渋谷駅まで歩いていた。神泉から松見坂へいたるこの付近の様子は興味深く読めた。また現代(といっても1984年ごろ)の渋谷の様子は、私の学生時代の記憶とも重なるものがあり、思わずそうだったとうなずいてしまう。

 この本を開き、記憶が重なる町の話しを見つけると、懐かしさをおぼえるとともに嬉しくなる。赤羽など、東京本にはめったに取り上げられない町の話もあり、東京本愛好者には要チエックの一冊。

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