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2010/10/16

「西方の音」を読む

 またステレオの調子が悪い。ちょっと大きな音量になると左チャンネルが時々ビビル。この種の問題の経験者なら分かると思うが、間欠障害とかIntermitent Failureなどと言われる時々起きる障害は、一番厄介である。数年前にも同じような症状になったが、そのときは原因が分かるまで3ヶ月ぐらいかかったが、さて今回はどうだろうか・・・。

Seihonooto_2 ところでこの一週間、「西方の音」(五味康祐、新潮社)を読んでいる。いま五味康祐の名を知る人は少ないだろう。五味康祐は芥川賞作家だが、その後の剣豪小説(柳生武芸帖など)で人気作家となり、麻雀や手相鑑定などでテレビに出演していた。もし今の時代に生きていれば、ワイドショーに取り上げられるような問題もあった人物だが、クラッシクレコードを愛する人物でもあった。

 「西方の音」は、音楽全般に関わることに加えてオーディオ装置について芸術新潮に連載された文章をまとめたもの。

 剣豪小説で人気がでた五味は、高名なオーディオ評論家の推薦にしたがって高価なオーディオ機器を購入するのだが、まったく気に入らない。自宅に大型コンクリートホーンまで作ったがそれもダメ、助言にしたがって次々新たな装置に買い換えるが、ことごとくハズレる。

 もしかして五味の聴く能力に問題があるのではと思うかもしれないが、戦前、彼の実家は、興業主であり映画館も経営していた。その映画館には当時の最高級スピーカーであったウェスタン社製のスピーカーがあり、彼はそれを聴いて育ち。家には居候の芸人もいて、彼らが弾く楽器の良し悪しも良く分かる子供だったそうだ。

 その五味が、最後に行きついたスピーカーがタンノイである。それも最高機種のG.R.F.Autograph。彼は、これこそコンサートホールの雰囲気を再現する最高のスピーカーだと激賞した。彼のこの評価は、日本のオーディオマニアに伝わる「クラッシクならタンノイ」という、いまも語り継がれる伝説を広めるのに大きな影響を与えた。

 それもあってか、タンノイG.R.F.Autographは、一時期高級オーディオショップの定番展示品となっていたが、それらを実際に聴いてみると、それほど良いと思わないことがあった。しかし、これをもって全てのG.R.F.Autographを評価していけない。じつはG.R.F.Autographは、スピーカーユニットを納める複雑な構造の箱が重要なのだが、その箱がオリジナルでないものもあった。もともと手作り品なので製品ごとにバラツキがあるし、ましてノンオリジナル品となれば、たとえ材料や寸法がオリジナルと同じでも、図面に表れない製造ノウハウが反映されずオリジナルと同じ音の箱を製作するのは至難であったはずだ。

 ところで「西方の音」など五味の音楽・オーディオ関係の本は、新刊本屋の棚では見かけないが、いまも新潮社から入手可能。紙の本は新潮オンデマンドブックス、ファイルは新潮オンラインブックスでそれぞれ購入できる。また、角川から発売されたランティエ叢書「ベートーヴェンと蓄音機」(五味康祐)にもタンノイの話が収録されているので、もし近くの本屋で入手できればこれがおすすめである。

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