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2011/02/27

隅田川暮色を読む

 「それぞれの東京」(川本三郎)で取り上げられていた「隅田川暮色」(芝木好子、文春文庫)を読む。

Photo 舞台は、主人公が生まれた隅田川沿いの浅草、主人公がひっそりと住む本郷崖下の弥生町、夫の実家の老舗組紐屋がある湯島。この作品は、浅草・弥生町・湯島という東京の三地点を舞台に、主人公冴子、その夫である悠、冴子の幼馴染の俊夫の三人が織りなす話。

 冴子の父は、隅田川沿いの家で空襲にあい川に飛び込み助かるのだが、川から上がったあと亡くなってしまう。戦災では多くの人が隅田川で亡くなっているが、冴子にとって隅田川は、子ども頃の思い出がよみがえるとともに父親の死に結びつくところでもある。

 主人公の隅田川への深い想いは、現代からは想像しにくいが、この小説の時代設定である昭和35年頃の隅田川の風景を思えば、なるほどとなる。

 昭和35年発行された「奥さま散歩」という本がある。朝日新聞家庭面の連載をまとめたもので、題名どおり奥さま向けのお出かけ案内。この本の中に向島百花園やブリジストン美術館、デパートなどと一緒に隅田川にあった”水中供養塔”が紹介されている。

 隅田川下流の相生橋、その上流側の川のなかに卒塔婆が林立していたのである。これらの卒塔婆は、川で亡くなった人々を供養するためだが、そこは管理されたものではなく、震災や戦災、水の事故などで親や子を失った人々が立てたのである。

 昭和35年頃までは、このような風景が隅田川にあったことを知ると、隅田川暮色の印象も一味違うものになる。

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2011/02/20

東京の東、春の古本市(2011)

 今春の東京の東は、古本イベントが3週連続で開催されます。会場は、隅田川に沿って下流から上流に向って佃、深川、向島と並び、古本好きにも、街歩き好きにも、楽しめるイベントが予定されています。

開催日順に並べると

1.ふるほんカフェ日和&アートマルシェ

 3月5日(土)11:00~16:00 雨天中止、会場:東武伊勢崎線曳舟駅前イーストコア曳舟広場、鳩の街通り商店街屋外広場

 ふるほん日和プレイベントとして「ふるほんカフェ日和」&「アートマルシェ」が開催されます。

2.深川いっぷくいっぱこ古本市

 3月19日(土)~21日(月、祝日)に予定されていた、深川いっぷくいっぱこ古本市は5月3日~5日に延期されました。

3.みちくさ市

 3月20日に予定されていた、みちくさ市は中止(3月14日主催者発表)

 詳細は、みちくさ市ホームページで告知されています。

4.あいおい古本まつり

 3月26日(土)11:00~18:00、27日(日)11:00~17:00、会場:相生の里・あいおい文庫

 今年、新たに「あいおい古本まつり」が、隅田川沿いの中央区佃で開催されます。「古書現世」、「南陀楼綾繁」という強力メンバーが企画、東京の有名古書店が参加、講演、トーク、街歩きツアーなど盛りだくさんのイベントが予定されています。

 親子で楽しむ「子ども一箱古本市」(参加費¥500)を募集しています。

 詳細は、相生の里のホームページで告知されています。


5.ふるほん日和

 4月2日(土)10:00~17:00、雨天の場合は3日に順延、会場:墨田区向島鳩の街通り商店街

 「第3回 井戸端古本マーケット ふるほん日和」が、墨田区向島 鳩の街通り商店街で開催されます。今年は、「ふるほん日和 presents ブックマルシェ(全国古本屋巡り)」曳舟駅前広場(4月1日~4月3日)が同時開催となり、会場も内容も拡大。

 出店数:35店程度、出店ブース:約90cmx90cm、販売形式 :フリマ、参加費:¥1000

 出店者募集開始しています。

 詳細は、ブログ「ふるほん日和」で告知されています。


6.不忍ブックストリート 第12回 一箱古本市

 4月30日(土)、5月3日(火・祝日)の2日間開催

 募集は3月7日午前0時から、
 
 詳細は、ホームページ「不忍ブックストリート」で告知されています。


以上

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2011/02/13

音の出る雑誌

 活字+音となると現代なら電子ブックとなりそうだが、かつて音の出る雑誌があった。

7dsc08595 薄いビニールシートできたレコード(ソノシート)が入っていた雑誌である。ソノシートは、柔らかく曲げることができるので雑誌の間に挟むことができ、音楽だけでなく朗読や語学練習などに幅広く利用された。

 朝日ソノラマは、朝日ソノプレス社(朝日新聞社が出資した会社)から発行された月刊誌。1960年8月発売の9月号(昭和35年)をみると、20ページほどの本文の間に6枚のソノシートが綴じられている。雑誌の中心に穴が開き、ソノシートのあるページを開いたら雑誌全体をそのままレコードプレーヤーにのせることができる。回転数は、LPと同じ33回転、音溝は片面のみである。

 50年前に作られたこのソノシートを聴いてみた。

 現代の軽量針圧のプレーヤーでは、雑誌の反りを拾って時々針飛びを起こすので、少し針圧を増やして再生。

 1枚目の”さらば夏の光よ”は、その昔のNHKラジオの昼のいこい調のゆっくりしたナレーションで始まる天竜下りの話。実況録音とナレーションを組み合わせた内容は、まさしくかつてのNHKラジオドラマの世界。記事の署名は、串田孫一。2枚目の”歌う越路吹雪”は、シャンソン風の語りと歌をまじえたオリジナル曲、当たり前だが越路吹雪の歌声がとても若々しい。記事の署名は森岩雄、作詞・構成には岩谷時子の名前がある。

 どんーと飛ばして6枚目のソノマンスリーは、7月にあった池田内閣成立、本山事件犯人インタビューという社会記事。

 なるほど、これは音で聴く総合月刊誌。インターネットもデジタルカメラもないアナログ時代のマルチメディア雑誌だ。

 写真は朝日ソノラマと付録、赤いのは板厚を3.3倍とした両面形ソノシート(ケイブンシャの超厚盤ハイシート)で映画音楽が収録されている。

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2011/02/06

オリジナル・ワンピース

 勢いよく階段を上がってくるなり、”Do you have one piece?”と店員へ質問する外国人女子を銀座で見かけた。

7dsc08509 ワンピース?洋服なら隣のビルだけど、入り口を間違えたのかと思ったら、店員は店奥を指差さして”Yes we have”。さすが銀座の本屋は、外国人の対応になれている。

 本屋でワンピースと言えば、コミックのワンピース。

 日本のコミックは海外でも人気が高く、それぞれの言語に翻訳されたものが海外で販売されているが、やはり日本に来たら、たとえ日本語が読めなくてもオリジナルの日本語版を買いたいそうだ。

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2011/02/02

それぞれの東京

 神保町の東京堂で、「それぞれの東京」(川本三郎、淡交社、平成23年1月)を購入。

Photo この本は、副題に「昭和の町に生きた作家たち」とあるように、昭和に活躍した作家と作品の舞台となった東京の町について月刊誌「なごみ」に連載したものを、一冊にまとめたもの。

 取り上げられている作家は23人。芝木好子、池波正太郎などの小説家に加えて、俳優(沢村貞子)、俳人(石田波卿)、映画監督(成瀬巳喜男)など、いずれも東京に関する作品を残された方が選ばれている。舞台となる町は、東は砂町から西は八王子と、東京の下町から郊外までカバー、それぞれ写真も入っている。

 この本を読み始めたら、紹介されている作家の本を読み、その町を歩いてみたくなる。まずは芝木好子「隅田川暮色」を読んでみようか。芝木好子は、「築地川」、「洲崎パラダイス」など東京の水辺を舞台にした作品があり、洲崎パラダイスは映画も見たが、隅田川暮色はまだ読んだことがない。その舞台は隅田川近くの浅草、時代設定は昭和35年だそうだ。

 川本三郎は、芝木好子の章で、”あまりに変化が速い。風景が次々に変わる。だから東京の人間は近過去へのノスタルジーが強くなる。「歴史」より失われたもの「想い出」が大事になる”と語っている。

 私も、この頃ちょっと昔の東京が気になっている。「それぞれの東京」は、私にとって、読み逃していた東京本を発見するとともに、東京の町めぐりを誘う本である。

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