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2013/06/23

穴のないマカロニ

 前回、”交通公社から発行された「外国旅行案内」(昭和30年)に、今では想像もできない話がぎっしり詰まっている”と書いたが、そのひとつを紹介しよう。

 イタリア旅行のコラムの中に「穴のないマカロニ」という話がある。

 その一部を引用すると、”マカロニとは穴のあいているウドンとお心得になっているのが一般だろう”・・・”大体穴あきマカロニはイタリアが輸出用に造ったものといわれ、ご本尊のローマでは原則として食べないで、スパゲッティという穴のあかないものばかし食べている。たしかに中身がからのものよりつまったものの方が上等だろう。だからマカロニを注文してウドンのまがいものを出されたなどといわないこと。”とある。

 今では小学生でも知っているスパゲッティを、まるで未知の食べ物であるかのように語っているのだ。昭和30年は、これほどスパゲッティは知られていなかったのだろうか?

 まずは”マカロニとは穴のあいているウドン”が一般だろうとしているが、これを確認してみよう。

 日本のマカロニの歴史は意外に古くて、明治初期からあったようで、昭和5年村井多嘉子(村井玄斉夫人)によって書かれた「台所歳時記」にマカロニトマトという料理が紹介されている。その中に”マカロニは、イタリアでできる物が一番よいとされています。近時、わが国でもよい物ができるようになりました”とある。

 さらに昭和12年主婦の友社から発行された「家庭向け西洋料理の作り方」には、マカロニ料理の作り方二十種という章があり、グラタンやスープなどのマカロニ料理を紹介している。その中で”マカロニの代わりに干しうどんを用ひます”とある。

 これで分かるように、マカロニは昭和10年代には家庭料理のメニューに登場するようになり、もしマカロニが入手できないときは、うどんが代用できることも知られていた。前記の”マカロニを穴のあいているウドン”というたとえは、このような背景によるものだろう。

 それではスパゲッティ料理は、いつごろから食卓にあがったのだろうか?

 さきに紹介した昭和12年「家庭向け西洋料理の作り方」には、マカロニ料理はあるがスパゲッティ料理はない。昭和20年代は戦後の食糧難ということで資料が見つからない。ようやく見つけたのが、昭和33年鶴書房から発行された「惣菜料理全書」。この本では洋風麺料理でマカロニ料理4品につづいてスパゲッティ料理”ナポリ風スパゲッティ”と”ニース風スパゲッティ”の2品を紹介している。”ナポリ風スパゲッティ”の材料は、スパゲッティ、鶏肉、生シイタケ、玉ねぎ、トマトピューレ(またはケチャップ)。これは、あのスパゲッティナポリタンだ。たぶん生シイタケはマッシュルームの代用だろう。

 また日本パスタ協会では”一般化したのは、イタリアから全自動パスタ製造機が輸入されるようになった昭和30年代以降のこと”と述べている。日本マカロニ(現マ・マーマカロニ)と日粉食糧(現オーマイ)が設立されたのは、ともに昭和30年となっている。

 どうやらスパゲッティは昭和30年になってから家庭に普及したようだ。

 「外国旅行案内」に戻ると、このガイドブックは昭和30年1月5日印刷、1月10日発行となっている。編集されたのは前年の昭和29年かそれ以前、ちょうどスパゲッティが登場する直前となる。となれば「穴のないマカロニ」のコラムは、当時はとてもタイムリーだったかもしれない。スパゲッティをさして”中身がつまった方が上等だろう・・・”というのはちょっと強引すぎるが、いまとなってはこれも昭和30年の面白話だ。

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2013/06/16

昭和30年の世界旅行は

 小津映画「お茶漬けの味」(1952年、昭和27年公開)のなかに海外(ウルグアイ)へ旅立つシーンがある。以前紹介した「旅程と費用」は昭和30年代の国内旅行ガイドブックだったが、この時代の海外旅行はどのようなものだろうか?

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 その答えとなるのが、交通公社から発行された「外国旅行案内」(昭和30年発行)。その体裁は現代のガイドブックと似ているが、中身は今では想像もできない話がぎっしり詰まっている。

 このガイドブックの話を進める前に、当時の海外旅行事情を確認しよう。日本人の海外旅行が自由化されたのは、東京オリンピックのあった1964年(昭和39年)。それでもまだ回数の制限があったのだが、昭和39年以前となると一般の人が海外旅行をすることは難しく。そのもっとも大きなハードルは、外貨割り当てだった。

 「外国旅行案内」は、外貨と旅券の話からはじまる。その内容をかいつまんで説明すると、海外渡航は外貨の入手方法によって1)一般外貨、2)特別外貨、3)第三者保障の3種類がある。

 先に2)、3)を説明すると、2)特別外貨は、輸出により得た外貨の10%を渡航費として利用できる制度によるもの。3)第三者保障は、海外の外貨所有者による支払が保障されている、たとえば海外の奨学基金による留学などの場合。

 1)一般外貨は2)、3)以外で、自費で海外渡航する場合だ。しかしこれには厳しい条件があった。当時は外貨はすべて政府が所有・管理していたので、政府の渡航審議会に申請して外貨割り当ての許可を受けることが必要。ガイドブックでは許可となる渡航は、次のような場合としている。

 a) 経済に益する科学技術の知識修得のための科学技術者
 b)製造法研究・製造に関する契約、又は産業経営の調査研究などを目的とするもの
 c)市場視察・売買契約の締結・取引の設定などの用務を持つもの
 d)スポーツその他文化関係・私費留学、あるいは国際会議出席者など

 これを見る限りでは、観光旅行はまったく無理のようだ。以前、この時代に海外渡航をした人の話を聞いたが、たとえ公務といえども外貨割り当てを受けるのは難しく、また割り当てを受けても額が少なくてヤミドルを入手することがあったそうだ。現代のように誰でも自由に海外旅行できる時代とは大違いだったのだ。

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2013/06/09

ルイージ・マルティナーレのStrage Daysを聴く

 ルイージ・マルティナーレ ”Strange Days”(ALBCD-20)は、6月5日発売。全11曲中8曲がオリジナル、残り3曲がスタンダードのイタリアジャズ・アルバム。どんなアルバムだろうかという質問には、アルバム・タイトルにもなっているStrange Daysのライブ映像が回答となるだろう。

 
 1曲目Strange Daysの抒情的なミディアムテンポの演奏につづいて、2曲目:スタンダードの名曲Bewitchedは、ぐっとスローテンポになり歌うように演奏、3曲目:The electric blue flight caseの、転調を繰り返すテンポの良さについひきこまれてしまうなど。演奏スタイルは変化に富むが、どれもメロディが美しく分かりやすい。しかも美しさだけに流されることなくグイグイとせまってくる力強さがある。これは久しぶりに出会った密度の高いピアノトリオ・アルバムだ。

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2013/06/02

青い花の憂鬱

 数年前から、この時季になると小さな青い花をつける草を近所で見かけるようになった。

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 花は小さい(直径1cmぐらいだ)がその花弁の形は「キキョウ」に似ている、名前は「キキョウソウ」。もともと北米原産の帰化植物で、線路ぎわやブロック塀そばにも茂っている。見かけによらず繁殖力が強いようだ。

 葉と花のつきかたが面白い。茎をとりかこむような葉は、2cm間隔ぐらいでつみかさなり、花はそれぞれの葉の根元から咲いている。草丈にくらべて花が小さいので咲いていることに気づきにくいが、探すとこんな所にもというぐらい見つかる。

 これとは逆に、かつて山野に自生していた日本古来の桔梗(キキョウ)は、いまやレッドデータに登録される絶命危惧種。桔梗(キキョウ)とキキョウソウ、名は似ているがその勢いは大きな差があるようだ。着物の柄や家紋にも描かれ親しまれていた日本の桔梗は、どうなるのだろうか。

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