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2016/06/26

珈琲記

 前回の「コーヒーと恋愛」につづいて「珈琲記」を読みはじめる。珈琲記(黒井千次、紀伊國屋書店)は、食の文学館に掲載された珈琲に関する連載にあらたな書き下ろしを加えたエッセイ集。

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 ”朝の珈琲は一杯というわけにいかず、食事中にゆっくり飲み、そして新聞を持って居間に移り、楽な椅子にかけて食後のもう一杯を飲む”と、二杯の珈琲は、著者の朝のルーティンに組み込まれている。こうなると珈琲の味や入れ方に強いこだわりも持っていて、どの街にもある手軽なカフェなどには絶対入らないように思ってしまうが、これがそうでない。

 たとえば、”時間がないのにとりあえず珈琲を飲みたくてたまらない時など、ハンバーガーショップに飛びこんで珈琲だけ注文”。それは隙間だらけの珈琲色の液体だと言いながらも、それにふさわしい作法と味覚があり、これまた捨て難いと語り。また、チェーン展開しているカフェの珈琲についても、”街角の珈琲に別種の味覚をつけ加えたものといえそうな気がする”と語る。このように著者の珈琲への姿勢は、それぞれの長所短所を認めながらとても寛容なのだ。本書は、大人の珈琲への向かい方を語る一冊だ。

 ところで、この本は1997年発行、ということはシアトル生まれのカフェが日本に上陸してまだ間もないころであり、最近話題のサードウェーブコーヒー(黒船コーヒー)などは上陸どころか船影も見えないころだ。著者はこれら新しい珈琲をどのように思っているのだろうか、続編を読みたくなる。

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2016/06/18

コーヒーと恋愛

 ”いつの間にか獅子文六がブームのようだ”という古本TさんのMの日記に触発されて、ちくま文庫で復刊された獅子文六の小説を読みはじめた。

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 「コーヒーと恋愛」(獅子文六、ちくま文庫)は、昭和37年~38年(1962~63)に読売新聞に連載された長編小説「可否道」を改題したもの。新劇出身でTVドラマの人気女優ながら美味しいコーヒーをいれることに誰もがみとめる才能をもつモエ子と、今の言葉でいえば格下夫となる年下の舞台装置家の夫の勉、その間に入り込む若い新人女優のアンナ、さらにコーヒー愛好家の集まりである日本可否会の面々がからむ恋愛模様をえがいた作品だ。

 今から約50年前、作家が70歳のときに書いた作品だが、話の展開も言い回しも古さを感じさせず現代に通用する。唯一、話がタクシーやバスなどの料金に及んだとき、これが昭和30年代の作品であることを知るが。全体を通してみると舞台をパリやニューヨークに移しても成立しそうな軽妙なラブコメディになっている。これは映画化したら面白いだろうと思ったら、すでに1963年に制作されていてモエ子役は森光子だったそうだ。

 ところでサードウェーブコーヒーというのがよく分からない。サードウェーブの特長として語られる、厳選したコーヒー豆を注文を受けてから粉にしハンドドリップでコーヒーを入れるのは、以前からちょっとした町の喫茶店でもやっていたし。産地にこだわりを豆を焙煎するところも以前からあった。サードウェーブとはなんだろうとモヤモヤしているうちに、マニアの間ではフォースウェーブの話がでているらしい。どうやらすっかり波に乗り遅れてしまったようだ。

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2016/06/05

行きつけの喫茶店

 散歩の達人6月号の特集「喫茶100軒」は、さまざまな分野で活躍する100人がそれぞれお気に入りの喫茶店を紹介している。オシャレな新しいカフェから昔ながらの町の喫茶店まで、まるで図鑑のように編集されている。

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 サラリーマン時代は、出張時の待ち合わせとか時間調整のためにチェーン展開している喫茶店を利用していた。駅前とか目的地へのアクセスが分かりやすい店を選ぶので、どうしてもそのような店に入ることが多かったのだ。チェーン店であれば、椅子やテーブル、メニューや価格も共通なので初めての店でも安心して入れる。しかし、そこはコスト管理が徹底しているチェーン店だけあって、久しぶりに訪れたら閉店して居酒屋になっていたりして慌てることもあった。

 仕事を離れてとなると、これは通いなれた町の喫茶店に入ることが多い。あらためてそれらの店をふり返ると、いずれも表通りから少し奥まった路地にあり、さらに店主や店のスタッフの対応が心地よいところだ。店主のこだわりが強すぎると、カップひとつを手にするのも緊張して落ち着かないし。かといってゆるすぎて店の手入れが十分でないと、それが気になる。初めて入ったときは良いと思っても、二度三度訪れたらこれはちょっと違うとなり、それまでとなることもある。

 山口瞳に「行きつけの店」という本がある。そこでとり上げられている料理屋や旅館は、味だけでなく、そこで働く人々の立ち振る舞いを含めた店の雰囲気が決め手のようだ。これは町の喫茶店選びにもあてはまる話だろう。

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