オーディオ

2015/05/10

Vitaphoneレコード

 Vitaphoneレコードと呼ばれるレコードがあった。文献によれば、これは映画用、直径16インチ(40センチ)、毎分33 1/3回転、収録時間は約14分の容量をもっていた。直径30センチのLPレコードなら20分は収録できるのに、それより大きいのに時間が短いのはなぜだろう。

 じつはLPレコードとこの16インチレコードは回転数は同じだが、開発された時代と技術がまるで違う。

 LPレコードは1945年に開発された。それまでのレコードの材質を変えて音質改善、溝の間隔をせばめて長時間収録を可能にした。映画用16インチレコードは、それより20年前、映画がサイレントからトーキーになる1925年に開発された。これは家庭用レコードがまだ78回転だった時代だ。

 トーキーの仕組みでよく取上げられるのはフィルムに光学的音声トラックをもうけたもの。これはSound-on-film方式とよばれ多くの映画で採用された。じつはトーキー初期にもう一つの方式が開発されていた。音声をレコード盤に収録し、上映時にフィルムに同期して再生させるSound-on-disc方式。この代表例がWestern Electricが開発したVitaphoneだ。

 Vitaphoneの再生方法は、一般のレコードとちがっていた。一般のレコードは、ピックアップはディスク外周から内側にむかって進むが、Vitaphoneレコードはピックアップのスタート点をディスクの内側におき外側に向かって進む。なにか珍発明のようにみえるが、レコード再生に問題はない。

 VitaphoneのようなSound-on-disc方式が成功しなかったことは、映画史から明らかだ。しかし、そこで採用された毎分33 1/3回転数は、その後のLPレコードで一般に普及し。さらに収録・再生をディスクの内側から外側に向けて進める方式は、デジタル時代のCDで採用されている。このようにみればSound-on-disc・Vitaphoneは、レコード史に記すべき項目のひとつだろう。

 上記Youtube映像は、ワーナーブラザースが1927年にVitaphone方式で制作した映画”Jazz Singer”の一部。

| | コメント (0)

2015/05/03

レコード回転数の不思議

 アナログレコードの販売が増加に転じた、国内オーディオメーカーが数十年ぶりにレコードプレーヤーを発売、したなど、アナログレコードに関するニュースがつづいている。デジタルメディアが、CD・MD・ネットオーディオとつぎつぎ変わりつつあるのに、アナログレコードがいまだに生きているのは興味深い。

Dsc01075d_2

 アナログレコードの不思議といえば、毎分33 1/3、45、78という回転数が真っ先に浮かぶ。特にLPレコードの回転数33 1/3は中途半端にみえるが、これはどこからきたのだろうか?以前、オーディオ関係の本を調べたが、確かな情報は見つからなかった。

 ところが先日、ずばりこれらレコード回転数がどのように決められたか記述した本をみつけた。

 「レコードのできるまで」は、白水社よりクセジュ文庫の一冊として1970年に発行。これはフランスで出版された1962年版”L'industrie du disque”(Pierre Gilotaux)の全訳。

 その”レコードの歴史”の章、エジソンの蝋管蓄音機につづいて現在のレコードの原型となったベルリナーの円盤レコード、”ターンテーブルの回転速度は1分間に約70回であった。このターンテーブルの速度はその後1分間に78.26となったが、これは60サイクル商用電源が供給され、46の減速比をもつ減速機を備えた毎分3600回転の同期電動機が、ターンテーブルの回転用と使用されるようになったからである”と述べている。

 さらに”LPレコードの特性”の章で、”33 1/3回転と45回転という回転数は、60ヘルツの送電網により供給される同期電動機の速度である3600回転の基本速度にプーリーによって直結している。減速比は33 1/3回転に対して108、45回転に対して80である”としている。

 78回転がモーターの回転数に由来するというのは、以前、どこかで読み、実際に古い電蓄の中をみて納得した覚えがある。電蓄のターンテーブルの下をみたら、大きなモーターに減速用ウォームギアが取りつけられその軸にターンテーブルがのっていた、いわゆるシャフトドライブでターンテーブルを直接回転させていた。まさしくターンテーブル回転数は、モーターの回転数+減速ギア比で決まる構造がそこにあった。

 しかし33 1/3、45回転の話は、いままで見かけたことがなく初めて知った。この話の原典はどのようなものだろうか、それが気になる。

| | コメント (0)

2014/08/31

1967

 音楽雑誌beatlegのバックナンバーVol.110(アコースティック・サウンド特集)のなかにママス&パパスの”唯一だが最高のライブ音源、モンタレー・ポップ・フェスティバル”の記事をみつけ、懐かしさとともに長年モヤモヤしていたものが少し晴れた気がした。

Dsc00735d

 ママス&パパスは、1960年代中ごろに「夢のカリフォルニア」や「マンデー・マンデー」などのビッグヒットをだしたアメリカのフォークロック・グループ。抜群なハーモニーを誇るアルバムが何枚かリリースされていたが、なぜかライブ・アルバムは見かけなかった。そんなときに「モントレー・ポップ・フェスティバル」の実況録音盤LPが登場したのだ。

 モンタレー・ポップ・フェスティバルは、いまや伝説となったウッドストック(1969年)に先立つこと2年、1967年に開催された。この種の音楽フェスティバルの先駆けとなり、ママス&パパスはその運営にたずさわり自らも出演した。出演者は30組をこえて、サイモン&ガーファンクル、ジャニス・ジョプリン、オーティス・レディング、ジミー・ヘンドリックス、ラビシャンカールなどその後に大活躍したミュージシャンが並んでいる。

 ところで、いまやCDでもリリースされているママス&パパス「モントレー・ポップ・フェスティバル」だが、初めてLPを聴いたときは、これは何だろうとなった。先ほどの記事では、”このライブは「マイク準備が整っていなかった」「12弦エレキのチューニングが不安定」「ミシェルの声が録音されていない」”などが述べられている。LPのライナーノーツでは”素直に表現して、このライブアルバムに聞くママス・アンド・パパスの歌いぶりは決してよくない・・・それでいて、このライブ・アルバムは、彼らのどのアルバムよりも素晴らしい魅力をもっている”とある。しかし、このLPを新譜で購入した当時は、あまりにほかのアルバムとの差がありすぎてとまどいが大きく、これは何だろうかとなったのだ。

 いまyoutubeで当時の映像をみると、ライブならではのエネルギーあふれる演奏は、素直に素晴らしいと言える。細かく聴けば不具合があるが、それを超えるものがあるように思えるのだ。

| | コメント (0)

2014/08/17

そうだEPアダプタだ!

 東陽町にあるダウンタウンレコードは、毎シーズン面白い企画のイベントを開催している。昨日(8月16日)、開催されたのは「レコdeトーク ディスクジョッキー・イン・7インチ・ヘヴン」というちょっと長いタイトルのイベント。シングルレコードをジャンル別に並べ、DJ二人ががそれを次々紹介していくのだが、そのジャンルを楽曲のスタイルだけでなく社会現象なども切り口にしているので思いがけない曲が流れる。

 たとえば「週刊TVガイド物語」(おおくぼ良太)は、競合誌に加えて女性週刊誌の特徴をこれでもかというぐらい歌詞に織り込んでいる。おなじ歌手の目蒲線物語に似た展開で雑誌出版業界物語となっている。これは出版業界人必聴だろう、よくぞこのような作品をリリースしたと感心してしまう。

 この面白さに刺激され、イベント終了後に店内で買い物。もちろん購入したのはシングルレコード、帰宅し早速聴こうとしたら気づいた。ドーナツ盤をプレーヤーにセットするためにプレーヤーの中心軸と盤の内側を埋めるアダプタが必要なのだが、それが見つからないのだ。そうEPアダプタという小さな円盤だ!そういえばここ数年LPは聴いてもシングル盤は聴いていない、EPアダプタはどこかにあるはずだがどこにしまったのか全く思い出せない。しばらくシングル盤を聴くのはおあずけだ。

 ところでシングル盤レコードは、LPと違って復刻されることもなく消えゆく運命にある。しかしその小さなレコード盤には時代の勢いのようなものが、LPより多くつまっているように感じるのは私だけだろうか。

| | コメント (0)

2014/03/02

ウォークマン再び

 最新型ウォークマンがきた。いわゆるハイレゾ対応、24Bit, 192KHz音楽ファイルが再生可能なモデルだ。

Dsc00186b

 初代ウォークマンを聴いたときの驚きはいまも覚えている。その頃あった小型テープレコーダーに似てあまり洗練されていなかった外形だが、そのサイズの機器からと思えない本格的なステレオサウンドをヘッドフォンで聴くことができた。その後、ウォークマンはカセットテープケースとほぼ同じぐらいまで小型化され、デザインも改善され、いつでもどこへでも持ち運べるオシャレな音楽プレーヤーとなりCD・MD・DATへ発展。

 ウォークマンを手にするのは10年いや20年ぶりだろうか。カセットテープではじまった私の携帯音楽プレーヤーはウォークマンが数世代つづいたが、クリックホイール付きのiPodにしてからは、新たに購入することはなかった。新しい操作感をもったiPodは使いやすく、買い替える気持ちがわかなかったのだ。しかしここにきてハイレゾという新しいフォーマットが登場、そこでハイレゾに力をいれているウォークマンにもどってみた。

 ハイレゾ対応のウォークマンは、ZX1とF880シリーズの二種類。いずれも外観も機能もスマートフォンとほぼ同じで、電話ができないアンドロイド・スマートフォンのようなもの。音質にこだわった作り込みのZX1は魅力的だが、ハイレゾはまだ発展中なので価格がてごろなF880シリーズを選んだ。最新アルバムを聴くと、細かい音の立ち上がりや余韻をのこしながら消えるのが分かり、低音・高音ともに気持ちよく聴くことができる。側面に音量・再生/停止・早送り・戻しなど専用ボタンを設けてあるので、画面に触れなくても操作できる。もちろんハイレゾファイルもそのまま再生できるなど、なかなか良く出来ている。

 しかしこれで十分かと問われると、どうだろうか。やはりDSDファイル再生に対応してほしいし、バッテリー動作時間をもっと長くしてほしい。たぶん次期モデルはこのあたりを強化してくるだろう。さらにウォークマンには、こんなことが出来るのかとワクワクするものを期待したい。

| | コメント (0)

2013/12/25

Kora(コラ)の音色

 今年の夏に出会ったナンシー・ヴィエイラ(アフリカ・カーボヴェルデ出身の女性歌手)のアルバムは、アフリカ音楽は荒々しいと思い込んでいたそれまでの私のイメージをすっかり吹き飛ばした。それはメロディもリズムも洗練されていて、とても心地よい音楽だ。

 それ以来、アフリカ音楽をときどきネットでさがして聴いている。最近、Youtubeでみつけたのが西アフリカの女性音楽家Sona Jobarteh。彼女が演奏する楽器がKora(コラ)。Koraは、男性が演奏してきたアフリカの楽器だそうだが、彼女は演奏家でありボーカリストでもある。大きな瓢箪のような胴体にネックをつけ弦をはった楽器は、その形からはとても想像できない繊細で美しい響きをもっている。

| | コメント (0)

2013/10/06

幻の立体放送

 年上の人と昔のラジオ番組について話しをしていたら、”そんなのあったかな?記憶違いでしょ”といわれ、ちょっとへこんだ。

_smq140

 そのラジオ番組とは立体放送である。立体放送といっても最近の3Dテレビでなく、いまでいうステレオ放送。まだFM放送がステレオ化するまえにAM二局によるステレオ放送があり、父親がラジオを2台おいて聴いていたような記憶がかすかにあったのだが・・・。

 先日、入手した「音の遍歴」(高城重躬、共同通信)を読んでいたら、ずばりそのことが詳しく書かれていた。それによれば”FMのステレオが始まる以前、NHKで第一放送が左、第二放送が右で、立体音楽堂というのを毎週日曜日にやっていた”、”このAMによる立体音楽堂は昭和39年4月5日で打ち切られた”とある。

 やはり立体放送は、幻でなく本当にあったのだ。

 昭和39年は東京オリンピックが開催され、新幹線や首都高が登場して東京の町が大きく変わったが、じつは放送も大きく変わった年でもあった。

 写真は当時の技術雑誌に掲載されていたパイオニアのステレオマスターSM-Q140型。番号2が同調ツマミ1でMW/SW、番号12が同調ツマミ2でFM/MW。AM(MW)放送が2局同時に聴けるようになっており立体放送が楽しめる。

| | コメント (0)

2013/09/15

カーボ・ヴェルデの音楽3

 CDショップのセールでDVD「セザリア・エヴォラwithアート・リンゼイ」をみつけた。

Cesariaevoradvd2

 タイトルがカタカナで表記されているように、これは海外制作の映像に日本語字幕をつけた国内版(2004年発売)。ピーター・バラカンと中原仁による解説が追加されている。

 カーボヴェルデの海岸を散歩するシーンからはじまり、海外イベントや地元で歌う姿、アート・リンゼーとのコラボ映像もある。セザリア本人が語る自らの生い立ちや音楽へのかかわり、友人知人が語るセザリアの人柄、カーボヴェルデの風景もたっぷりあり、セザリアの歌をまじえたドキュメンタリー映像作品となっている。これはセザリアと彼女が育ったカーボヴェルデを知る手助けとなる作品だ。

 ところで日本語版にある「アフリカのビリー・ホリディ」のサブタイトルはどうだろうか?セザリア・エヴォラとビリー・ホリディを結び付けるのは、いまひとつ分かりにくい。ここは映像にもあった彼女のニックネーム「Barefoot Diva」(裸足のディーヴァ)のほうが、しっくりするように思う。

| | コメント (0)

2013/08/25

カーボ・ヴェルデの音楽2

 ナンシー・ヴィエラをきっかけに始まったカーボ・ヴェルデ音楽めぐりは、セザリア・エヴォラ(Cesaria Evora)へ。すでにカーボ・ヴェルデ音楽に親しんできた人からみれば、なにをいまさらと思うかもしれないが、その歌声は深く心をわしづかみする。

Cesaria Evora Voz D'Amorは、2003年グラミー賞を受賞したアルバムのタイトル曲

 地理的にみればカーボ・ヴェルデは、パリダカラリーで有名になったダカールのあるアフリカ・セネガル沖400kmに位置している島国なので、その風俗・習慣はセネガルとの共通点が多いかもしれない。しかし海外文化とのふれあい、そこからの発展は異なっている。


大きな地図で見る

 セネガルは、かつてフランスの植民地で、いまの公用語はフランス語。カーボベルデは、ポルトガルの植民地で、いまの公用語はポルトガル語。地理的には離れているが、ヨーロッパ文化との融合では同じようにポルトガル語を公用語とするブラジルに近いものがある。

 セザリア・エヴォラの音楽はモルナという形式で、ポルトガルのファドを源流とするといわれている。楽器編成(たとえば小型4弦ギターのカバキーニョなど)が似ているためか、どこかブラジル・サンバに近い響きを感じる。このように思うのも、モルナもサンバもそのルーツがポルトガル文化とアフリカ文化の融合という点で共通しているためだろう。

| | コメント (2)

2013/08/03

ナンシー・ヴィエイラのインストアライブ

 カーボ・ヴェルデの歌手ナンシー・ヴィエイラのアルバムを本ブログで紹介をしたら、Kai-Wai散策のmasaさんから、代官山蔦屋書店でのインストア・ライブの情報を頂いたので早速出かけました。(当日のライブの様子は、masaさんがKai-Wai散策ナンシー・ヴィエイラ@蔦屋書店で素晴らしい写真とともに報告しています)

Dsc06659d

 開演時間ギリギリに着いたとき会場はすでに満席、さらに立ち見客がエスカレーター後方までぎっしり並ぶほどの大盛況。7月10日にアルバムが発売されたばかりなのに、多くの観客が集まっていました。

 ギター1台のみでアルバム収録曲を歌うナンシーさんは、笑顔がとてもチャーミングで表情豊かです。しかも初来日・日本での初ライブとのことでしたが、歌声は美しく安定感たっぷり。曲の合い間にカーボ・ヴェルデの紹介をしたり、日本語の歌詞がはいった歌「サイコウ」を観客と一緒に唄うなど、とてもリラックスした素晴らしいミニライブでした。

 それにしてもカーボ・ヴェルデとナンシー・ヴィエイラのことはわずか数日前に知ったばかりですが、本人の歌を生で聴けるなんてすごい展開!

| | コメント (2)

より以前の記事一覧