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2005/05/30

JJ 植草甚一 再び(2)

JJ 植草甚一 再び(2)

 植草甚一スクラップブックは、1976-1977年に出版された全41巻におよぶ。このシリーズはジャズや映画の話題が多いが、その中に「ぼくの東京案内」という散歩系の本があり、以前から読んでみたいと思っていたが、なぜか果たせずにいた。

 昨年(2004年)9月から、このシリーズの復刻版発行が始まり「ぼくの東京案内」も復刊されたので、神田三省堂で買ってきた。まだ読んでいる途中だが、「いまの東京」が、すでに懐かしの東京になっていることに気づく。例えば、「バスと陸橋」は、巻末では初出不明となっているが、内容を読むと1968年頃の東京での話のよう。植草さんは、走るバスの中から見た歩道の両側にかかる橋の名前が分からず、バスの車掌にたずねたら「陸橋です」と言われ、なんとなく納得しないまま陸橋の話題からイタリア映画の話題になり、さらにヒッチコックの話になり、最後にたまたま届いた雑誌のグラビアで橋の名前が「横断歩道橋」であることを知り終わるのである。

 バスの車掌さんについては、不思議な思い出がある。私が子供の頃、バスの車掌さんが身につけていた切符などが入るバッグは、子供のオモチャとして売られており、バスには車掌さんが必ず乗っていた。しかしワンマンバスに切り替わり、やがて車掌さんを見かけることはなくなった。ところがワンマンバスが当たり前になった1980年代はじめ、たまたま東京駅から乗ったバスで車掌さんに出会ったことがあった。ワンマンバスなので料金業務は運転手さんが行なっていたが、年配の女性車掌さんが停留所の案内をしていたのである。その後、二度と同じようなバスに出会ったことはなく、友人達に話しても、そんなのあるはずがないと言われ終わってしまった。

 この不思議な車掌さんの事はすっかり忘れていたのだが、「ぼくの東京案内」を読み思い出した。もしかして、あれは幻の猫バスだったのだろうか。誰か同じような光景を見た人はいなだろうかと、いまも思っている。

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