古書との出会い:東京おもかげ草紙(佐野都梨子)
ちょっと気になる本を古書店でみつけたとき、既に書評を読んだり、以前からよく読んでいた作家の一連のシリーズの本であれば、その本がどのような内容なのか読まずに購入することがありますが、いままで一度も見たことも聞いたことのない作家となると、やはり中味を少しは読まないと買うところまでいきません。しかし、ときどき表紙やタイトルを見ただけで買ってしまうことがあります。
[東京おもかげ草紙、佐野都梨子、発行:東京新聞出版局、昭和50年」は、そのタイトル「東京おもかげ草紙」と著者略歴の「深川に生まれる」だけで買ってしまいました。
著者の佐野さんは、万葉集関係の記事を雑誌・新聞に発表されていたそうで、東京おもかげ草紙は、家庭画報に連載していた「維新から東京へ母娘の見た東京」に書き下ろしの2編「明治の大川端風物詩」、「想い出の大川端東と西」を加えたものです。
明治から昭和にかけて、著者が暮らした東京の様子が、きめこまやかに描かれています。とくに大川端東西では、新大橋付近にあった自宅およびその付近の、当時の人々の生活と町の様子がていねいに描かれています。ぶどう棚のあった自宅、お隣の消防署、お向かいの五軒長屋に住む先頭さん、コロップやさん、歌舞伎の殺陣師さん、通り奥に住んでいた踊りの師匠さん、一銭蒸気船に乗っていた絵本売りなど、古いの東京の想い出話がたくさんつまっています。
本つくりも女性ならではの細やかさがあふれており、ところどころに古い絵草紙がカラーページで入っています。どこか懐かしい絵は、この本のもう一つの楽しみです。一粒で二度おいしい本です。
東京おもかげ草紙に入っている絵草紙
| 固定リンク
コメント
こんにちは。
佐野都梨子の遠い親戚のものです。
今年4月、都梨子の一人娘(といってもだいぶお婆ちゃん)
が亡くなり、佐野方は多分それで絶えてしまうので
ルーツのよすがに 東京おもかげ草紙を検索してみました。
このように書いて下さる方が21世紀にいらっしゃるのは
嬉しいことです。
ちなみに、佐野都梨子の夫は『スピード太郎』の宍戸左行です。
こちらも是非読んでみてください!
投稿: めぐみ | 2009/07/08 16:33
このたびはコメントを頂きありがとうございます。
「東京おもかげ草紙」は、明治・大正の東京、とくに大川端の両側に広がる下町の様子を記録した本として、今も私の本棚に並んでいます。佐野さんは、ほんとうに素晴らしい本を残されました。
ところで、佐野都梨子さんのご主人が宍戸左行であったとの情報を頂きありがとうございます。たぶん本では、ご主人は画家のように書いてあったと思いますが、宍戸左行だったんですね!
投稿: じんた堂 | 2009/07/08 23:19
古書との出会い:東京おもかげ草紙(佐野都梨子):を拝見しました。彼女のご主人宍戸左行について知りたく、ご息女がお亡くなりになったとのことですが、宍戸左行のご親族の方をご存知でしたらご住所等をお知らせ頂ければ幸です。
よろしくお願い致します。 小沼
投稿: 小沼 | 2010/07/20 16:10
小沼さま、
ご依頼の件、メールにて対応させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
投稿: じんた堂 | 2010/07/27 10:28