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2006/02/25

古書との出会い:東京文学地図(槌田満文)

 前回の高木健夫さんの「東京の顔」ですでに述べましたが、槌田満文の名は、高木健夫さんや安藤鶴夫さんと一緒に、木村荘八さんの銀座界隈に書誌担当者として登場しました。今回は、この槌田満文さんの本「東京文学地図:槌田満文、都市出版社、昭和46年発行」を紹介しましょう。

 表紙折り返しに記されている著者略歴によれば、槌田さんは東京新聞に勤務し「名作365日」や「明治東京歳時記」などの本を刊行しました。その後、武蔵野女子大学教授となり、東京都近代文学博物館の運営にもかかわりました。日本の古本屋で槌田さんの著書を検索すると、東京文学地名辞典、明治大正風俗辞典、ことばの風物誌などがみつかります。

 東京文学地図は、そのまえがきにあるように”文学に描かれた東京によって、東京風景の変遷をたどる”ことを目指しています。

 たとえば銀座では、「新東京繁昌記:服部誠一、明治7年発行」の一部を引用することで明治7年の銀座の様子を描き、「桜の実の熟する時:島崎藤村、大正8年」の引用で明治23年の銀座を描き、同じように銀座を舞台とした明治・大正の文学作品を紹介しています。さらに昭和になると「銀座雑記帖:高田保」昭和8年、「銀座新涼:森田たま」昭和14年、「東京誕生記:ノエル・ヌエット」昭和30年、「感傷チンチン電車:安藤鶴夫」昭和42年などが原作の一部引用とともに紹介されています。

 全部で東京32ヶ所を選び、銀座と同じような手法で、その場所を描いた文学作品を年代に追って紹介しています。そのため外観は新書のようですが、400ページを超えるやや厚みのある本となっています。
  
 ところで、まえがきにも述べられていますが、”引用が原作のほんの一部にすぎない・・”とあるように、この本だけで選ばれたそれぞれの作品の内容を十分に知ることは、まず出来そうもありません。むしろ、この本は東京の各地を描いた文学作品を検索するための、”地名をインデックスとした文学作品の年代順ガイドブック”として使用するのが良いようです。

 たとえば深川・州崎のページを開くと、深川に関する部分では「深川の唄:永井荷風」、「秘密:谷崎潤一郎」、「三尺角:泉鏡花」、「忍川:三浦哲郎」、州崎では「浅瀬の波:広津柳浪」、「夢の女:永井荷風」、「州崎パラダイス:芝木好子」などの作品名がみつかります。

Tokyo_Bungaku_Chizu

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