古書との出会い:東京の横丁(永井龍男)
「東京の横丁:永井龍男、講談社、1991年」は、日本経済新聞に連載された「私の履歴書」に著者自らが手を入れたものです。その原稿は亡くなれた後に見つかり講談社から刊行されました。
「東京の横丁」は、永井龍男が生まれ子供時代をすごしたた神田猿楽町の描写から始まります。明治末から昭和初め、駿河台下にあった借家が立ち並ぶ横丁には、八百屋、魚屋をはじめ様々なもの売りがやってきました。
そこはニコライ堂が近いせいか、ロシア人女性や英国人宣教師などの外人も住んでいました。やがて永井家は、横丁の別の家に引越して二階に下宿人をおきますが、そのとき下宿人のところに遊びに来ていたのが芥川龍之介だったりするなど、横丁に登場する人はじつに多彩でした。
「東京の横丁」は、さらに関東大震災、戦争、鎌倉の話などが続きます。それぞれは短い文章ですが、さすが短編の名手といわれる永井龍男の作品だけあって、どれも読み終わると落ち着いた気持ちになります。
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