古書との出会い:ぎんざ1982(リクルート)
「ぎんざ1982」は、タイトル通り1982年の銀座を記録した本で、リクルート本社が新橋から銀座8丁目に移転したのを記念して関係者へ配布されました。
本の前半は、銀座の歴史と開発に関する対談と寄稿文から構成されていますが、やはり銀座の老舗への遠慮があるのか、あたりさわりが無い内容で、いかにも企業が発行した記念本という印象を与えます。その一方で、「夜の銀座絵図」という銀座のクラブやバーなどの興亡を実名入りで描いた、まるで週刊誌の水商売ルポのような記事も混ざっていたりして、企業発行の本らしくない部分もあります。
ここまでであれば「ぎんざ1982」は、ちょっと変わった企業本の話て終わるのですが、この本には面白い仕掛けがあります。
この本の後半は写真集(撮影:藤森秀郎)になっており、銀座路地裏の風景や人物写真が数多く入っています。表通りには見られない生活感あふれた情景は、銀座がかつて下町と言われたことを見る人に思い出させるでしょう。
じつは仕掛けというのは、この写真集と付録地図にあります。
写真集の各写真には番号が付いていますが、この番号は付録の銀座路地マップ上にもあり、同じ番号の場所をたどることで、写真の撮影場所を地図上で確認することができるのです。この写真の景色は銀座の何処だったのかとか、地図にあるこの路地はどんな景色だったのかと、1982年の銀座路地めぐりができます。また、もし付録の地図を参考にして実際に路地に立てば、1982年当時と現在の様子を比較することも出来るでしょう。
「ぎんざ1982」は非売品の本でしたが、大量に配布されたらしく古書店で安価に売られています。読み物としては物足りないものがありますが、箱のデザインも付録の地図(表:鳥瞰図、裏:路地マップ)も凝っていますし、なんと言っても工夫次第で色々楽しむことができる東京本です。
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