いまふたたび伊丹十三(2)
伊丹十三の二冊目は、日本世間話大系にしよう。この本は、以前、単行本を読んだことがあったが、出先で読むために古本屋で文庫本を探してみた。
しかし、これがなかなか見つからない。近くのブックオフの文庫本棚をみても、伊丹十三の名を書いた仕切り板が無い、「い」のコーナー、文春文庫のコーナー、新潮文庫のコナー、¥105のコーナーの全てを探したが、どこにも伊丹十三が無いのだ。
こうなれば意地でも見つけてやると、都心のブックオフを目指した。先ずは目白のブックオフ、ここは時々近くに用事があるので立ち寄る店だ。しかし目指す本は無かった。そのまま一駅歩き高田馬場のブックオフ、ここは¥300の単行本コナーや専門書も置いてある中型店だが、ここにも無い。さらに山手線で原宿へ向かい原宿ブックオフへ、さすが大型店だけあって伊丹十三の新潮社版文庫が2冊あったが、探している日本世間話大系がない。
いったい伊丹十三の本はどこへいったのだろうか。
坪内祐三は、「シブい本」の”エッセイストになるための文庫本100冊”のなかで、昭和軽薄体として、伊丹十三「日本世間話大系」を、嵐山光三郎、椎名誠、村松友視などと一緒に上げている。椎名誠の本は、本屋にあふれるほど並んでいるのに、伊丹十三の本が無いのはどうしてだろうか。
これは、最近、あまり新刊本を買っていないので、そろそろ買いなさいという本の神様の啓示かとかんがえ、結局、家の近くの本屋で新潮社版文庫を購入してきた。
やはり何度読んでも伊丹十三は面白い。いかにも肩の力を抜いて気楽に書いたように見せて、無駄な表現がまるでない。じつは相当練った文章ではと思っていたら、浅井新平さんが、新潮文庫版あとがきにそのあたりの話を書いている。「イタミさんは原稿用紙の裏に文字を書連ねていく。そして、それを原稿用紙のヒトマスに二文字入れて書き移し、最後にヒトマスに一字ずつ入れる」とある。これは、大変な労力だ!こんな細やかな作業をしながら、しかもそのことを読者に意識させない伊丹十三は、すごい!そして、このあとがきだけでも、新潮社版文庫を買った意味は十分ある。やはり、新刊本を買わねばならぬのだ。
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コメント
こんにちは。
伊丹十三の本が見当たらないというのは単に出版社の都合であるが、その内容は二読三読した人間の深層に染み込んでいるのです。
例えば牛乳を飲む時に東海林さだおのエッセイを思い出したり、砂浜でビールを飲む時に椎名誠を反芻する事はあっても、それは浅い所を漂う記憶と知識みたいなものです。単にかぞらえているだけと言おうか。
深層への刺さり方が全然違う。
投稿: Log | 2012/08/28 10:06