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2006/06/26

古書との出会い:石版東京図絵(永井龍男)

 「石版東京図絵」(永井龍男)は、坂崎さんの「東京本遊覧記」に取り上げられており、まえまえから読みたいと思っていた。先日、その本をぐうぜん入手した。永井龍男の本を読むのは、前回の「東京の横丁」につづいて二冊目で、時代背景や取り上げられた出来事はかさなる部分が多いが、「石版東京図絵」は、さまざまな職人の世界を描いた小説になっている。

Sekihantky_1 変わりゆく東京の町とともに、職人の世界がどのように変わってきたかを丁寧にえがいていく。このあたりの描写は、東京神田駿河台下の路地でうまれた永井龍男ならではだろう。明治、大正、昭和、震災、戦災や火事のたびに古い東京が消えていくとともに、職人の世界も変わっていく。おなじ職人から出発しながらも、震災や戦災の混乱を、金儲けの好機ととらえて他人を出しぬき商売をし大金持ちになるものがいれば、手間はかかってもしっかりしたモノ造りを目指す一職人に徹するものもいる。時代はちがうのだが、そこで描かれた世界は、現代に通じるものがある。

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