いまふたたび伊丹十三(3)
前回、伊丹十三の「日本世間噺大系」を探し回ったことを書いたが、たまたま入ったブックオフで見つけた。それも欲しかった文春文庫版だ。あれほど探したときは見つからなかったのに、なんという巡り会わせだろう。
ところで、文春文庫版(左)と新潮文庫版(右)を並べてみたら、カバーデザインが微妙に違うのにきづいた。 両方ともタイトルの字体も色も同じで、イラストも同じ矢吹申彦が担当しているが、描かれた人物がちがう。 文春文庫版は、上役と頭を下げているサラリーマンのような人物を描いているが、新潮文庫版は、ちょっと不器用そうなオジサンが走っているような絵だ。それでも全体のイメージは、ほぼ同じである。
和田誠は、装丁物語なかで「文庫のカバー」について、”ぼくはできるだけ読者に混乱を起こさないように・・・文庫化の場合、少なくとも自分が単行本もやった場合は、ほぼ同じデザインをすることが多い”と語っている。たぶん新潮社の担当者も、そのような考えで、会社が変わってもあえて同じようなイメージとすることを選んだのだろう。
しかし、そうとも言えないものもある。たとえば、以前紹介した「女たちよ!」は、文春文庫版と新潮文庫版でまったく図柄が異なっている。これはどうしてだろう。和田誠は、その本のなかで”編集者の立場になれば、・・・単行本と文庫で出版社が違うということもあります。この場合、A社で出した雛形みたいな本はB社としては作りたくない”とも書いている。編集者も、いろいろ悩んでいるんだろうな。
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