リンボウ先生「東京珍景録」(林望)
初めての町を歩いたとき、古い建物や商店につい目がいってしまう。建築の専門家でもないし商店経営の専門家でもないし骨董趣味があるわけでもない、しかし、ちょっと古いものや珍しい光景をみつけると、なんとなく嬉しくなる。このようなモノに対するこだわりは、すでに路上観察学(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊)としてまとめらているが、「学」というのは、どうも大げさすぎる気がする。たとえば、初対面の人に「自分は路上観察学会員の・・・」と名乗るのは、いかにも怪しげな団体のようでとても出来そうもないし、私だって相手からそう名乗られたら構えてしまう。路上観察学会員ほどではないが、町の風景やファッションなどにこだわる人をなんと呼べばよいのだろうか。ここでは単純に「町歩き愛好家」とでもしておこうか。
さてリンボウ先生「東京珍景録」(林望)は、ここまで述べてきたような東京の古い建物や街並みを写真とともに紹介している本だ。もともと雑誌「東京人」と「GQ]に掲載されていた連載をまとめたものだが、どこか古風な言葉つかいながら筆がとても軽妙で、作者自身による写真をを含めて、リンボウ先生の多芸ぶりが表れている。なお、この本は文庫版も出ているが、文庫版は写真のキャプションが単行本から書き換えられ、より解説が多い説明的な印象がする。
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