アースダイビング(片側町を行く)
休日の11月23日、前日の天気予報では雨だったが、雲はそれほど厚くなく、気温も外出にダウンジャケットをもちだすほどでもない、まずまずの曇り空。この日は、masaさんから誘いをうけたアースダイビング、早稲田・王子・三ノ輪橋・向島を歩く日だ。アースダイビングについては、Kai-wai散策とそこからのリンク先に詳しく述べられているので、それを参照していただくとして、後半の三ノ輪橋から向かった山谷堀・向島の話しをしよう。
都電三ノ輪橋駅から浄閑寺前をとおり、大門前の見返り柳をながめ、今は公園になっている山谷堀跡についた頃は、あたりは闇に包まれていた。地方橋、山谷堀橋、吉野橋などの地を通りすぎるが、水を失った橋は道路わきに柱が残っているのみだ。下流に向かって右側は、堀ぎりぎりに家が立ち並び、左側は道路となり、それに面して工場や飲食店がとこどころにある。夕闇に浮かぶ橋、この風景どこか引っかかるものがあったが、先を急ぐ。
隅田川を桜橋でわたれば、川面に屋形船がゆっくりすすみ、浅草雷門あたりから観光客を乗せて来たのだろうか、人力車が橋の上を進んでいく。交差点角にある喫茶店「カド」の横を通り過ぎ、今夜の最終目的地である向島「とも」に到着する。「とも」は、お好み焼き・もんじゃ焼きの店と聞いていたが、元は料亭の別邸として作られたそうで、料理も海鮮鉄板焼き、もんじゃ、焼きソバ、寿司という豪華なものだった。
さて家に帰ってみると、歩いている途中に感じた「この風景どこか引っかかる・・・」が気になってきた。実際に歩いたのは初めてなはずなのに、どこか懐かしい気がした、たぶん何かの本で読んだのかもしれない。日本堤、山谷堀、向島となれば、これは永井荷風だろうと墨東奇談(新潮文庫)を開けば、7ページ冒頭に「古本屋の店は、山谷掘の流れが地下の暗渠に接続されるあたりから、大門前日本堤橋のたもとへ出ようとする薄暗い裏通りに在る。・・・正法寺橋、山谷橋、地方橋、髪洗橋などいう橋の灯がわずかに道を照らすばかり・・・」の文章がみつかる。
まさしく我々が歩いた山谷掘りのコースは、永井荷風の墨東奇談にでてくる”山谷掘の水に沿うた片側町の裏通りにあった古本屋”があった地だ。そして向島で食事をした後、小雨のなか我々を駅まで送ってくれたのは「yukiりん」と名乗る美しい女性だったが、「雪」とは、これも墨東奇談に登場する名前だ。これは偶然だったのか、はたまた周到に企画されたものだったのか、いずれにしろ素晴らしい一日に感謝である。
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コメント
ああそうでしたよねえ、荷風の頃も随分裏寂びた雰囲気のように書いてありますが、今なおそんな感じが残っていますね。年齢とともに、墨東綺譚の読み方感じ方も違ってきますよね。拙ブログのタイトルの「譚」は恐れ多くも此処から戴いたものなのです。
投稿: neon | 2006/11/26 21:26
こんにちは
もんじゃの席ではご一緒させていただいたfuRuこと古川です。
じんた堂さんのHP、ブログ、ともに風情がありますね。
勝手ながら、リンクさせていただきました。
これからもよろしくお願いいたします。
投稿: fuRu | 2006/11/27 09:54
neonさん、こんばんは、
たしかに昔読んだ本をいま再び読み返すと、こんな面白い話が書いてあったのかと、その逆にどこが良かったのだろうかと、印象が変わることがありますね。じつは永井荷風はどうも苦手で、今までちゃんと読んだことが無かったのですが、今年の春にたまたま墨東奇談を読んだら、けっこうスラスラ読めました。
投稿: じんた堂 | 2006/11/27 23:54
fuRuさん、こんばんは、「とも」ではありがとうございました。
fuRuさんを含めてお会いした皆さんのホームページは、それぞれデザインは違っても、とてもキレイというかオシャレですね。こういうオシャレ度が高い人が、町歩きだけでなく、チベットや中国に興味を持っていることに驚いています。これからも、よろしくお願いします。
投稿: じんた堂 | 2006/11/28 00:40
じんた堂さん
「チベット」までみていただいたのですね。
うれしいですね。
夫婦2人でチベットに行ったのがすでに10年以上前のことですが
昨日のことのように思い出されます。
それほど印象的な体験でした。
投稿: fuRu | 2006/11/28 17:54
洒落た散歩の体験談、いい感じですね。気になるというか、引っ掛かる風景ってたまに出くわすことがありますが、書物だったり映画だったり、勝手な想像だったりいろいろです。
焼き付いている心象なんですね、無数のシーンが音もなく頭のなかを駆け巡り、何かのきっかけで突然ポロッと意識に上る。不思議な出会いです。
投稿: △イチおじさん | 2006/11/28 18:37
△イチおじさん、
心の引っかかり、あるときは映像だったり、あるときは音だったり、またあるときは文字だったりして、とても不思議です。自分の中では、共鳴というか波を感じるような感覚に近いのですが、どうもそれだけもなそうです。
投稿: じんた堂 | 2006/11/30 00:58