針を下ろす
S君は、自宅リビングの壁一面にCDやレコードを並べている、つい最近も、長年使ってきたJBLのスピーカーを最新型にしたばかりのオーディオマニアだ。そのS君から、雑誌にアナログプレーヤー特集が掲載されているとのメールをもらった。
見渡せば我々の生活は、多くのデジタル機器に取り囲まれている。いま画面を見ているパソコンだってデジタル、携帯電話だってデジタル(アナログ携帯というのも一時期あったが)、カメラもデジタル。いまデジタルを否定したら、我々の身の回りはスッキリを通り越して、不便きわまりないだろう。それでもいま一つデジタル化の波に乗りきれない、いや完全にデジタル化を受け入れたくない分野がオジサン達にある、オーディオだ。
デジタル音楽データの扱いやすさはずば抜けている。現在の携帯オーディオなどは、デジタル技術なしでは成立しない製品だろう。ところがSACD(スーパーオーディオCD)になると、より滑らかな録音再生が可能だと言われ、さらにDVDオーディオであればさらに良いと言われてしまう。この根底にあるのはサンプリングの周波数と分解能のことらしいが、なんかいま一つ分からない。結局、いかにアナログに近づけるかのように思えてならない、であれば最初からアナログにしたらになってしまう。
それではアナログに回帰しようと、もう一度レコードを聴こうとするとこれが大変だ。レコードプレーヤーを入手したとしても、最近のアンプには昔はどのアンプにもついていたphono入力が付いてないので、そのままではレコードは再生できない。プレーヤーとアンプの間にフォノイコライザーを追加する必要がある。つぎに問題になるのが消耗品やアクセサリだ。レコード針は、使えば磨耗するので交換しなければならない。もしベルトを使用しているプレーヤーであれば、そのベルトもいずれは交換しなければならない。
ときどき雑誌の特集などで、アナログレコードを紹介する記事を見かけるが、レコードを楽しむためには色々な準備や手入れが必要なことも書いてほしい。オーディオ評論家にとっては常識かもしれないが、なにしろ、いまや一度もレコードに触れたことの無い若者もいる。彼らがお父さんやお祖父さんが残したレコードやプレーヤーを使うときにきっと役立つはずだ。
なお交換用レコード針は、いまもナガオカで生産しており通販で入手可能、またベルトも通販で入手できるので、必要なひとは検索してみるとよいだろう。
さて私も、ここらでレコードにゆっくり針を下ろす準備をしようか。幸いレコードもPhono付きのアンプもある、あとはプレーヤーだけだ。
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