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2007/04/21

一箱古本市2007(2)

 今年の市川糂汰堂は、女性店主:遊歩半箱さんを迎えて「じんた堂+遊歩さん」の半箱づつのコラボを予定しています。じつは遊歩さんは、じんた堂の同級生。同級生といっても、明大アカデミー公開講座:岡崎武志さんの「古書の世界」の受講生なんです。

Photo_16 本を通じての人々の交流を描いた美しいエッセイがあります。舞台となるのは、イタリア・ミラノに実在したコルシア・デイ・セルヴィ書店。「コルシア書店の仲間たち」(須賀敦子)は、ミラノのサンカルロ教会の軒先にあった物置を改造して作られた書店に集まった人々の出会いと別れを静かに描いている。

 ヨーロッパ有数の一族でありながら書店のパトロンだったツィア・テレーサ、戦時中はレジスタンス活動を行い書店のリーダーだったダヴィデ・マリア・トゥルド神父、ルキノヴィスコンティを幼友達とするフェデリーチ夫人、やがて須賀敦子の夫となる書店をとりしきっていたペッビーノなど、コルシア書店に集まる人々はみな個性的だが共通の理念で結びついていた。しかし時が過ぎるにつれて、それぞれの想いの微妙なズレが大きくなり。さらに教会との対立そして政治改革の波にあらわれ、書店自体の存在もあやうくなる。これはミラノにうまれた夢のような書店が、その輝きを失う悲しい話でもある。

 須賀さんが仲間を見つめる目は温かさにあふれ、読む人を優しい気持ちにさせる。しかしその文章は、感情に溺れることなくいつも冷静、そのことは読む人により深い感動を与える。須賀さんは、この本の最後を”若い日に思い描いたコルシア・ディ・セルヴィ書店を徐々に失うことによって、私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知ったように思う”と結んでいる。

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