新編ノラや・福武文庫版
昨年もそうだったが、一箱古本市が終わると、その売れ残りを通勤本として読んでいる。きょうは、「新編ノラや」(内田百閒:福武文庫)だった。
いまさら内田百閒と思われるかもしれないが、福武文庫版は、ちょっと他の文庫版と違っているのだ。
福武文庫版で、彼ハ猫デアルの最初の数行をみると、
”何匹いたか知らないが、その中の一匹がいつも親猫にくっ付いて歩き、お勝手の前の物置の屋根で親子向き合った儘居眠りをしていたり、欠伸をしたり、何となく私共の目に馴染みが出来た。”
同じ部分を、中公文庫版でみると、
”何匹ゐたか知らないが、その中の一匹がいつも親猫にくっ附いて歩き、お勝手の物置の屋根で親子向き合った儘居眠りをしてゐたり、欠伸をしたり、何となく私共の目に馴染みが出来た。”
この違いが分かるだろうか、そう、福武文庫版はその帯に”初めての現代かなづかい”とあるように、内田百閒がこだわった旧かなを、全て現代かなに変えてあるのだ。さらになぜか、”お勝手の物置”を”お勝手の前の物置”など、字句も変えている。
内田百閒の文章を、全て現代かなにしたのは、大きな挑戦だと思うが、なにか余計なお世話という気もする。まあー今となっては固いことは言わずに、面白本として楽しめる。もちろん福武文庫版はすでに絶版になっている、さあ、どうです、買い逃した方おしいと思いませんか。
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