乱歩と東京
「乱歩と東京」(松山巌)は、サブタイトルに「1920都市の貌」とあるように、大正末から昭和初めに発表された乱歩作品と、その背景にある東京の町を取り上げている。
この本には、大正から昭和初めの建物の写真が収められている。その建築形式をなんと呼ぶか分からないが、あきらかに従来の和風建築と異なる。
たとえば二階に作られたベランダとその上のアーチや外壁に浮き出た太い円柱などは、あきらに西洋風だ。しかし、完全に洋風化されているかといえば、そうでもない。ベランダは西洋風だが、その手すりの透かし模様は松になっており、まるで和室の欄間のようなである。たぶん大まかなデザインは、欧米の家の絵や写真などを参考に行ったのだろが、その細部は、よく分からずに従来の和風の意匠をそのまま採用している。
都内にわずかに残る昭和初期の建物を見ると、一見、未消化のようだが、現在のものよりどこか力強さを感じることがある。このところ都内に新しいビルが数多く登場している、どれも洗練されたデザインのようだが、どうも力強さが足りない気がするのは私だけだろうか。
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