銀座化粧
久しぶりに古い日本映画を紹介しよう。先日、神保町の書店で日本名作映画集29「銀座化粧」というDVDを見つけた。「銀座化粧」は、成瀬巳喜男監督による1951年の映画。名前からも分かるように、銀座で働く女性が主人公になっている。その冒頭の画面は、お約束のように、銀座4丁目にある和光の時計から始まる。
成瀬巳喜男は、東京の下町の裏通りを舞台にした作品をいくつか残しているが。銀座化粧の主人公が勤めるバーは銀座にあるが、住んでいるのは銀座にほど近い下町(新富町)の路地、長唄の師匠をしている家の二階に、小さな息子と二人で暮らしてている。
この映画を風俗としていま見て驚くのは、バーの客を目当てに物売りをする人々の光景だろう。バイオリンを伴奏に巧みに唄う子供(歳を聞かれて八つと答えている)、三人連れでバーに入りテーブルを回る物売りの子供達、花売りの姉妹、三味線を伴奏に芝居のセリフを語る二人組みなど、いまでは完全に消えた光景が映っている。
映画評論家:佐藤忠男氏によれば、成瀬巳喜男はロケーションが嫌いでセットでの撮影が多かったそうだ。実際、バーや路地裏の家々はセットらしいが、路地へ続く街並み、その途中出会う紙芝居屋、さらに銀座付近の水辺を歩く実写風景が映っている。その中には埋め立てて間もない三十間掘りの様子もあり、まだ橋の姿を保っている三原橋らしい風景も登場している。今見れば、古き東京の風景記録としても参考になる作品だ。
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