わがやのお雑煮#2009
あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
2007年1月、わがやのお雑煮が話題になりましたが、その後、幾つかの話しが集まりましたので2009年の初めとしてまとめてみました。
お雑煮ついてまず話題に上るのは、いわゆるご当地雑煮というものですが、なかなかこうだと言い切れないないようです。おおまかには、西の丸餅と味噌仕立て、東の四角餅とすまし・醤油味じてたの汁の違いがありますが、東京のお雑煮はこうだという話しになりますと、とたんに我が家は違うとの話しが続出して、なかなかまとまりません。
いろいろな話を聞いたり読んだりしますと、東と西の地域の違いのほかに、お雑煮には、具沢山の本格派と、具が極めて少ない簡素なものの系統があり、それぞれがご当地化することで具がかわり。さらに、親から他の地へ移動した子へ伝わり、地域を越えて拡がっていったように思えてなりません。
1.本格派からご当地化へ
先日紹介した「ニッポンの縁起食、なぜ「赤飯」を炊くのか」の雑煮の項をみますと、
”雑煮の中身は地方色豊かです。それぞれの地方ならではの名産物や、旬の魚介類、野菜類などが入ります。この雑煮も、本来はお供えした餅を下げた羹(熱い汁で煮たもの)、つまり、直会の儀式でした。共に煮る具も、蓬莱飾りに見られるような乾物が多かったようです”と、述べています。
蓬莱飾り(ほうらいかざり)は広辞苑に解説されていますが、新年祝いの飾り物で、熨斗(ノシ)アワビ、伊勢海老、勝栗、昆布、ほんだわら、串柿、裏白、橙などを飾ります。もしこれらの材料でお雑煮を作ったとすれば、アワビや伊勢海老が入った、豪華で具沢山なものとなりそうです。
皇室のお雑煮には、味噌仕立ての汁に、丸餅、ダイコン、サトイモ、ニンジンに、アワビとナマコが入るそうですが。アワビは、蓬莱飾りにも登場するもので、これが本格派の源流に最も近いものでしょう。
しかし、地方ではアワビや伊勢海老は入手が限られ、それぞれの地方で入手しやすい食材に置き換えられたはずです。海が近ければ地元の魚や貝、さらにそれらを加工したカマボコやチクワとなり、海が遠い地方であればニワトリや鴨肉などが具となり、こうしてお雑煮ご当地化がはじまりました。
2.簡素派の広がり
東京の甘味屋のメニューに雑煮がありますが、これは簡単なものが多いようです。すまし汁に、焼いた角餅に麩と三つ葉か青菜などが入っているだけです。これを本格派から生まれたとするのは、少し無理があるように思います。それよりも徳川家康の雑煮として伝わっている、角餅に青菜と花カツオという武家の雑煮からきたと考えたほうが良いでしょう。
この簡素派は、ご当地化にあたっても、もともと具が限られていますので、青菜が三つ葉へ置き換わる程度で、その変化はわずかだったはずです。武家に限られた簡素派は、明治になると一般にも広まり、具にも鶏肉や魚が加わったのではないでしょうか。
3.東京のお雑煮の話し
話しを東京のお雑煮に戻しますと、本格派の雑煮は、野菜類はそのままに、汁は、味噌仕立てから醤油・すまし汁となり、お餅は丸から四角、具のアワビは、鶏肉やカマボコ、または全くなしになったようです。
たとえば、「あの味この味ふる里隠れ味」(渡辺文雄、作品社、昭和56年)のお雑煮の話しの中で、東京出身の河内桃子さんは、”おすましの中にコマツナ、ダイコン、ニンジン、サトイモを入れます。それ以外は入れません”。同じ東京(神田)出身の渡辺文雄は、”四角い餅、それを焼いて、ダイコン、ニンジン、サトイモ、コマツナ、そして醤油味”と語っています。たぶん、これが本格派の流れをくむ、東京の雑煮の姿ではないでしょうか。
甘味屋で見かけるような簡素派の東京雑煮の話しとしては、池田弥三郎が、そのものずばり汁粉屋の雑煮について語っています。
「味にしひがし」(池田弥三郎、長谷川幸延、読売新聞社、昭和50年)で、池田弥三郎は、町のお汁粉屋の雑煮について、”すまし汁で、塩味の単純なもので、中には、餅のほかに、ちくわの二きれと、みつ葉ぐらいしかはいっていない”、さらに、”三が日の雑煮も、およそどこの家も大同小異であって、うちでは、少々のとりの肉を入れるくらいのものだ”と書いています。
以上、東京の雑煮についての聞き書きをもとに、想像を膨らませてまとめたものを参考に、東京の雑煮をみますと。
汁は醤油・すまし汁、四角い切り餅に
1)コマツナ、ダイコン、ニンジン、サトイモを具にしたもの
2)鶏肉、コマツナまたは三つ葉を具にしたもの
の二種類となりそうです。なお鶏肉は、カマボコやチクワとすることもあり。
さて、皆さんの家の雑煮はいかがでしょうか。
本年もよろしくおねがします。
1月4日追加
ここで、これまで皆さんから頂いたコメントにありましたお2009年雑煮のレシピを、出身地:汁:餅:具の順でまとめました。
1)東京:::大根、牛蒡、人参、里芋、ネギ:3が日それぞれ違うお雑煮を作るそうです。2日目は、小松菜、なると、鶏肉、3日目は、ミツバ、椎茸、ささみ、かまぼこ。
2):すまし汁(鰹節、昆布、醤油、塩、酒、鶏肉):焼いた丸餅:水菜
3)福井:醤油すまし汁:丸餅(焼いていない)::お餅だけのシンプルなものです。
4)すまし汁:四角い焼餅:大根、里芋、鶏肉、三つ葉
5)静岡:すまし汁:四角い焼餅:大根、里芋、牛蒡+食べるときに海苔と鰹節をぱらぱらと振り掛ける
6):白味噌仕立て::里芋+大根+ほうれん草
これをみると、大根、里芋・・・と続くものが多いようですが、餅だけという素朴なものもあります。
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コメント
うわ…新年あら充実したエントリーですね〜。さすがです。昨年中は、あれこれとお世話になりました。本年も、どうぞ宜しくお願いいたします。
投稿: masa | 2009/01/01 01:57
こちらこそ、お世話になりました。
今の時代、何代もつづいている家庭の味は、お雑煮ぐらいかもしれませんね。そこには、その家というか家族の歴史が、つまっているのかも・・・。また話しが見つかったら、記録しておこうと思っています。
ところで、また面白そうな場所を歩く機会がありましたら、ご一緒させてください。
本年もよろしくお願い致します。
投稿: じんた堂 | 2009/01/01 11:00
私の家では元旦は大根、牛蒡、人参、里芋、ネギなどの根菜類、二日は小松菜、なると、鶏肉、三日目はミツバ、椎茸、ささみ、かまぼこと日替わりでいただきます。
90年続く江戸っ子ならぬ東京っ子の正月です。
それにしても何でわずか数百円から揃えられる正月飾りを飾らなくなってしまったんでしょうね?
投稿: 真理子 | 2009/01/01 13:23
真理子さん、あけましておめでとうございます。
なるほど、一軒の家で、三が日それぞれ具が違うというのは、なかなか面白いですね。しかも具を見ると東京雑煮の全てのバリエーションをカバーしているようで、じつに興味深いです。
もしかして、ご両親の家の味がそれぞれ残されているとか・・・。
本年もよろしくお願い致します
投稿: じんた堂 | 2009/01/01 21:59
じんた堂さん
あけましておめでとうございます。
今年は、ぜひ東京の徘徊・町歩き・アースダイビング、ご一緒させてください。
さて、お雑煮についてですが…。
妻の実家の出は、福井県です。妻に聞きますに、福井(のうちどの地方かはよく知りませんが)の雑煮はあまり好きでないといいます。それは、醤油の黒いすまし汁に、焼いていないただの丸餅が入っているだけなのだそうです。こうなると、餅そのものを味わう究極の雑煮のように気もしています。
2007年度の正月、皆さんの雑煮ついての情報をきちんとまとめようと思っていたのですが、そのままになっています。来年度ぐらい、第2回「わが家のお雑煮大会」でしょうか!!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
投稿: わきた・けんいち | 2009/01/02 00:25
わきたさん、あけましておめでとうございます。
奥様の実家、醤油すまし汁に餅だけのお雑煮は、興味深いですね。似たような話しを京都の料理旅館の息子さんが語っていましたが、その家では味噌仕立ての汁に餅だけだったそうです。やはり究極を求めると、こうなるのかも・・・。
本年もよろしくお願い致します。
投稿: じんた堂 | 2009/01/02 09:50
じんた堂さん、あけましておめでとうございます。
昨年はお世話になりました。新年のご挨拶が遅くなりまして失礼しておりましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
ところで、うちの雑煮はすまし汁、四角い焼き餅、大根、里芋、鶏肉、三つ葉です。
家内の実家(静岡県、三島)ではだいたい似たようなものですが鶏肉と青菜はなく、牛蒡など根菜をより加えたものになっております。そして召し上がるときにきざみ海苔と鰹節をぱらぱらと振り掛けるのが習慣のようです。
投稿: M.Niijima | 2009/01/04 00:59
じんた堂さん
明けましておめでとうございます。
夫の実家で新年を迎えたので、今年も我が家のお雑煮は白味噌+里芋+大根+ほうれん草でした。
いつものわたし作のなんちゃって白味噌仕立てではなかったのでとろとろおいしかったです。
どうぞ、今年もよろしくお願いします。
投稿: らく | 2009/01/04 10:39
Niijimaさん、あけましておめでとうございます。
お忙しい中、コメントを頂きありがとうございます。ところで、お雑煮を食べるとき、きざみ海苔をかけるのは、渡辺文雄の父親もそうしていたそうです。
本年もよろしくお願い致します
投稿: じんた堂 | 2009/01/04 20:29
らくんちさん、あけましておめでとうございます。
簡単だから誰が作っても同じと思うと、これが意外に味が違ったりして・・・お雑煮って本当に奥が深いですね。
ところで先日の明治百話のとき話しました、アルゼンチンタンゴバーのライブCDは、"TANGO VIVO"(Winter&Winter, 910-011-2)です。バンドネオンも良いですが、枯れた声で歌われるタンゴがいい雰囲気です。またピアソラも良いですが、ファンモサリーニもおススメです。
本年もよろしくお願い致します
投稿: じんた堂 | 2009/01/04 21:10