Shelly Manne & his Friends "MY FAIR LADY" を聴く
My Fair Ladyは、ブロードウェイで大成功したミュージカル、日本でも何度も舞台化され、オードリーヘップバーンで映画化もされたのでそのメロディを知る人は多いだろう。
手元にあるLPレコード MY FAIR LADY (CONTEMPORARY S7527)は、Shelly Manne(ドラム)をリーダーにAndre Previn(ピアノ)、Leroy Vinnegar(ベース)によるピアノトリオのアルバム。
いまはクラッシクオーケストラの指揮者と知られるアンドレプレヴィンのピアノは、ミュージカルナンバーをときに弾むように、またときに美しいバラードとして歌うようなジャズに仕上げている。この曲と相性がよかったのか、アンドレプレヴィンは、オードリーヘップバーンが主演した映画版マイフェアレディ(1964年)でも音楽を担当し、アカデミー編曲賞を受賞している。
ところで、このレコードは、曲も素晴らしいがその録音に注目する人が多い。
アルバムのジャケットに1956年ステレオ録音とあるのだ。
ステレオをふくめたマルチチャンネル録音の歴史は、磁気録音が早くから開発されたドイツでは戦時中までさかのぼれるそうだが、アメリカでは1950年代末までモノラルが主流だった。とくにジャズは、1950年代の名盤と呼ばれるものは圧倒的にモノラル録音が多い。45-45形式のステレオレコードが実用化されたのが1958年であったことをみれば、1956年のステレオ録音がいかに早いか想像できるだろう。
しかし、これはレコード音楽の歴史をみただけの話しのようだ。
映画の世界に目を向けると、1950年代の初めにMagnetic Film Recordingが登場していた。これは映画用音響装置で有名なWestern Electric & Westrexが開発した、Westrex Magnetic-Recording Systemと呼ばれる装置で、磁気コーティングされた35ミリフィルム上に3トラック(3ch)の録音・再生する。映画館での導入を容易にするため、メカニカルな走行系を、従来の光学的なフィルムサウンドトラックとほぼ同じようにした、マルチトラックの磁気録音再生装置だ。
また同じ頃、ラヂオ放送用に磁気テープ録音装置も、マルチチャンネルのものも実現されていたし。日本でも1950年代にAM二波(二局)を使用したステレオ放送があった。
したがって映画音楽や放送に関係していれば、マルチチャンネル録音は1950年代初めから可能だったのだ。アンドレプレヴィンはハリウッドで映画音楽に携わっていたこと、またコンテンポラリーレーベルが西海岸のロサンゼルスにあったことを含めて考えれば、1956年のステレオ録音はそれほど驚くものではないかもしれない。
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コメント
レコードは45/45方式に決着するまでの過程に時間がかかってしまったようですね。
このレコード是非聴いてみたいものです。欧州の一部レーベルではクラシック音楽収録に関して50年代中期に既にステレオ録音の極意が完成されてました(英国の一流、例えばDeccaとEMIといったレーベルでも収録技術に差があります)ので、それらとは違ったアプローチをしているだろう(せざるを得ない音楽分野の)ハリウッドでの実績を聴いてみたいです。
単純にシェリーマンやプレヴィンのトリオへの興味もあるのですが。
投稿: M.Niijima | 2009/06/10 02:55
手元にあるのは復刻版のLPですが、小音量だとピアノが目立つオシャレなピアノアルバムのような印象でしたが、音量を上げるとドラムの鋭さが浮かびあがり、ジャズピアノトリオらしいキレのよい音になります。各楽器のバランスが良くスピード感もあり、曲もよく知られているものが多く楽しめると思います。
ところでステレオレコードの方式ですが、45/45方式に決まるまでは、ビデオのVHS・ベータの戦いに似たような方式争いがあったのではと・・・。なかにはL・Rにそれぞれ溝を設けた2本溝方式まで試みられたようですから。
投稿: じんた堂 | 2009/06/10 20:08