両さんと歩く下町
漫画家秋本治は、東京の下町を舞台にした「こち亀」シリーズを書いている。「両さんと歩く下町」(集英社新書、2004年)は、その秋本治が、東京の下町を語った本である。
この本で初めて知ったのだが、漫画作品の表紙を扉絵というそうだ。
本を手にした読者は、扉絵のできしだいによって、これを読もうと気持ちになるし、また逆もある。そのために、各作家は扉絵に力を入れている。
こち亀の扉絵は、実際にある町のなかに両さんが登場する光景を細かく描いている。この絵を描くために、秋本さんは、東京の下町をこまかく歩き取材しており、「両さんと歩く下町」はその取材で得られた話しをまとめている。
もちろん、この本は、亀有をはじめに柴又、千住、浅草、上野、神田などの下町散歩のガイドブックとしても利用できるが、なんといっても、ところどころで明かされる「こち亀」の舞台設定と登場人物の話しが面白い。
たとえば超神田寿司というのがあるが、漫画とはいえこのネーミングはないだろうと思ったが、じつは絶対実在しない店名とするためあえてこのような名前にしたそうだ。いくら漫画の中の架空のお店だとしても、同じ名前のお店が実在すれば、思わぬ反応がおきるかもしれないので、細心の注意を払っているのだろう。漫画家の苦労の一端が垣間見える話しだ。
ところで、この本の巻末に山田洋次監督との対談が収録されているが、ここで山田監督が語る「男はつらいよ」渥美清の話はじつに興味深い。思わず、そうだったのかと・・・なる。この本、タイトルだけみると漫画風の内容かと思ってしまうが、読み物としても十分楽しめる。
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