蔵書数の質問へかっこよく答えるには
角川ランティエ叢書は、ハードカバーながら文庫サイズなのでカバンに入れやすく、ちょっとした外出に持っていくのに便利である。
今、カバンのポケットに入っているのは、先日開催された深川ふるほんばしで東京セドリーヌの箱から購入した「古本とジャズ」(植草甚一、角川ランティエ叢書、1997年)。JJオジサンが、1960年~1970年代に宝島や他の雑誌で発表した文章を一冊にまとめたものだ。
すでにどこかで読んだような文章が多いが、退屈はまったくしない、むしろ”そうそう”とか”それはどうかな”とツッコミながら楽しんでいる。若い頃はJJオジサンはなんて凄いだろうと思っていたが、自分があの頃のJJオジサンの歳に近づき、なんとなく余裕をもって読むことができるからだろう。
本好きの人に発せられる定番の質問の一つに、”あなたは何冊ぐらい本をもっていますか”というのがある。JJオジサンもそれに関する文を残している。たとえば1961年のモダンジャズについての三章では”ハードカヴァーの小説や雑誌やポケットブックのたぐいが、六畳の部屋ふたつと廊下に一万冊ばかりたまって動きがとれなくなってきた”とある。
それが1978年の植草甚一自伝となると”ぼくには本の物置になった借家があって、いまのアパートから歩いて五分で行ける。値打ちなんてない本ばかりだけれども、ちいさな古本屋なら三軒できるくらい溜まってしまった”となる。蔵書が自分の家の部屋におさまるころまでは本の数を把握していたようだが、本が増えるにつれてもはや数えることは不可能となり、”古本屋三軒”というちょっと想像しにくいが本好きにはたまらない表現になってしまったようだ。
それにしても蔵書の量を冊数でなく”古本屋三軒”などとお店や建物の数に置き換えて言うのはカッコイイと思わないか。いつかこんな表現を使ってみたいと思っていたら、先日のふるほんばしでそれに近い話をされた方がいた。”何冊ぐらいもっていますか?”の質問にたいして、”田舎に物置を二つ建てました”との答えた人がいたのだ。
江戸川乱歩は、書斎・書庫として土蔵を建てたが、そこまでいかなくても専用の倉庫や部屋を持つのは本好きの夢である。私もいつか”冊数は数えてませんが、四畳半の書斎に並ぶぐらいの本をもっています”ぐらいのことは言えるようになりたいものだ。
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