面白東京本5「東京風土図」
「東京風土図」(産経新聞社会部、現代教養文庫、昭和36年)は、昭和34年から36年にかけて産経新聞に連載され東京の町の記録をまとめたもの。
連載時期は、前回紹介した朝日新聞「東京だより」とほぼ同じだが、朝日新聞がレポーターに有名作家を起用したのにたいして、産経は地元公立小学校の先生を起用しており、巻末に調査に協力した先生の名前を列記している。
巻末に”この本が、東京を散策する方々のよき道案内となり、また学生・生徒のみなさんの社会科副読本としてお役に立てば幸いである。”と記されているように、その内容はじつにまじめ。町の歴史からはじまり、主な見所を現状(といっても昭和30年代)をイラスト図をまじえて紹介している。地元学校の先生起用が、いかされている。
しかしそれだけで終わらないのがこの本。
たとえば神田末広町の黒焼き屋に関連して、”その昔、黒焼き屋が軒を並べていた所で、薬店街であった・・・その裏町には、白ネズミののれんがかかった店もあった。ネズミは多産の象徴だが、実はご法度の不義の結末を引き受けるところであったらしい”と、珍しい話ものっている。イモリの黒焼きが滋養・強壮に効くほかに惚れ薬として落語などで語られることをあわせると、これはなかなか面白い取り合わせだ。
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