2011今年の一枚は
年末になると今年の一冊やベストアルバムなどが話題となる。
ふり返ってみると、今年はいつもの年より新しい本を読むことが少なかった、新しいCDアルバムの購入も少なかった。新作に挑戦しようとする冒険心が少ししぼんで、かつて感動したものをもう一度見直す気持ちが強くなった気がする。私の場合、本ならば1960年代の北杜夫作品を読みたくなり、音楽アルバムなら1970年代のチックコリア作品を、CDでなくあえてレコードで聴きたくなった。やはり3.11災害の影響だろうか、よく知るもので安心したい気持ちがどこかにあったのだろう。
それでも、このごろ何枚かの新作アルバムを購入、その中から選んだ今年の1枚は、
アントニオ・ファラオ(Antonio Farao)の最新作「ドミ」(DOMI)2011年11月16日発売は、今年最後を飾るイタリア・ジャズアルバム。ドミはアントニオの息子の名前、全曲アントニオのオリジナル。以前からアントニオ・ファラオを聴いている人によれば、ちょっと丸くなりすぎとの話もあるが、美しいメロディと力強いベースラインは、イタリアジャズピアニストの中でも際立っている。
1曲目のSomethingは、歯切れの良いピアノとそれをサポートするドラムとベースが力強くてスピード感があり。アルバムのタイトルともなっている8曲目のDomiは、一転してビルエバンスを思わせるようなスローバラード。どちらも、そのメロディにはどこか懐かしい響きがある。
ピアノの音色は、一つ一つがキラキラと輝くように透明感にあふれるが冷たさはなく、その芯に熱さを秘めたヨーロッパ・ジャズらしい音作りがされている。これは今年一番印象に残ったアルバムだ。
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