ベデカを手に旅を想う
以前、「東京案内記」の前書きに”ベデカを参考にした”と書かれていることを紹介したが、そのベデカにようやく出会った。
ベデカは、内扉に”HANDBOOK FOR TRAVELLERS by KARL BAEDKER"とあるように旅行ガイド。創業はドイツで1827年、日本ではシーボルト事件が起きた頃となり、あのミシュランガイドよりも古くからあり今も発行されている。
寺田寅彦の文章に、”かつてロンドン滞在中、某氏とハンプトンコートの離宮を拝観に行った事がある。某氏はベデカの案内記と首引で一々引き合わして説明してくれたので大いに面白かった。そのうちにある室で何番目の窓からどの方向を見ると景色がいいという事を教えたのがあった。その時自分はこんな事を云った。「これでは自分で見物するのでなくてベデカの記者に見物させられているようなものだ」”に登場するように、戦前、海外へ行く日本人に人気があったようだ。
写真のベデカは、「GREAT BRITAIN 第7版 1910」英語版。大きさは小型の辞書、小口三面(天、地、前)にマーブル模様を施している。表紙の裏に手書きのサインとGEOGRAPHIA(イギリスの地図出版社)のシールがあり、両方とも1923年とある。前の持ち主は、1923年(日本では大正12年、関東大震災が起きた年)に購入したのだろう。
さて寺田寅彦の文に登場する「ハンプトンコートの離宮」の部分だが、ベデカは、どのように解説しているのだろうかと調べたら”Hampton Court(see Baedeker's London)”とあった。どうやら、某氏が開いていたベデカは、「GREAT BRITAIN」でなくベデカ都市ガイド「LONDON」かもしれない。その答えは、ベデカ[LONDON」に出会うまでおあずけとしておこう。
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