カリンと「ゆずこしょう」
長野を旅したとき、畑でカリンの木と実を見たことがある。その実は、黄色、細長いリンゴのような形をしていていた。しかし、それは東京でみたものとちょっと違っていた。
東京で見かけたカリンは、秋の日差しのなかで艶やかに輝いていたが、長野のものは表面が粉を吹いたようで艶がない。そのときは、栽培種なので違うのかと思っていたが、最近、長野で見たカリンの正体を知った。
じつは長野でカリンと呼ばれていたものは、マルメロだそうだ。カリンは中国原産、マルメロは東アジア原産で植物分類上はカリンとは属が異なる。ともに形も色もそっくりだが、実の表面で見分けることができる。カリンの表面はつるっとしていてるが、マルメロは表面に毛があって艶がない。
やっかいなのは、長野ではマルメロをカリンと古くから呼んできており、砂糖漬けなどの加工品にもカリンの名をそのまま使ってきたことだ。さすがに最近は、食品の原材料表示は正しくしなければとマルメロとするところもあるようだが、長年慣れ親しんだ人はついカリンと言ってしまうそうだ。
そういえば、これもつい先日知ったのだが、「柚子胡椒」(ゆずこしょう)の原料は「柚子」と「胡椒」でなく「唐辛子」だそうだ。九州地方では「とうがらし」を「こしょう」と呼ぶ地域があるそうで、それがそのまま全国的に広まったそうだ。であれば「柚子胡椒」は「柚子唐辛子」(ゆずとうがらし)と呼ぶべきだが、「柚子唐辛子」はすでにあり、こちらは柚子風味の七味唐辛子のような製品だからややこしい。
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