007再び
古いEQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)を入手した。1965年5月の臨時増刊号は、イアン・フレミングのスパイ小説007シリーズの特集。
その巻頭をかざる「東京の印象」は、イアン・フレミングによる東京旅行記。オリンピックを前にした東京を訪れたイアン・フレミングが、東京の各地をまわりその様子と印象を述べているが、その描写は日本人ではありえないいかにも外国人らしさにあふれていて面白い。
たとえば宿泊した日本旅館の部屋に「縁までいっぱいにきめこまかい灰を入れ、一対の尖筆と鉄製の櫛のようなものを突き刺した大きな陶器のくずかごらしきものが置いてある」と書いている。もちろん、これは火鉢のことだが、火鉢を知らない外国人にはこのように描写すれば通じるのかと感心してしまう。
さらに東京温泉へいき、担当となった女性について「かおだちはブリジット・バルドーをもう少しこじんまりと整えたような感じで、黒い髪をBBカットにしている」、さらにその女性の服装や洗いかたやマッサージについてもこと細かく記述。また講道館を見学したり、芸者遊びをしたりと、日本を舞台にした映画「007は二度死ぬ」のシーンは、このときの経験をもとにしたのではと思えて興味深い。
意外だったのは、帝国ホテルでサマセット・モームと会食しており、講道館で二人が見学している写真が掲載されている。モームとフレミング、作家としては異なるタイプだが二人には交友があり、しかも同じ時期に来日していたのだ。
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