Vitaphoneレコード
Vitaphoneレコードと呼ばれるレコードがあった。文献によれば、これは映画用、直径16インチ(40センチ)、毎分33 1/3回転、収録時間は約14分の容量をもっていた。直径30センチのLPレコードでも20分は収録できるのに、それより大きいのに時間が短いのはなぜだろう。
じつはLPレコードとこの16インチレコードは回転数は同じだが、開発された時代が違い技術も違う。
LPレコードは1945年に開発された。それまでのレコードの材質を変えて音質改善、溝の間隔をせばめて長時間収録を可能にした。映画用16インチレコードは、それより20年前、映画がサイレントからトーキーになる1925年に開発された。これは家庭用レコードがまだ78回転だった時代だ。
トーキーの仕組みでよく取上げられるのはフィルムに光学的音声トラックをもうけたもの。これはSound-on-film方式とよばれ多くの映画で採用された。じつはトーキー初期にもう一つの方式が開発されていた。音声をレコード盤に収録し、上映時にフィルムに同期して再生させるSound-on-disc方式。この代表例がWestern Electricが開発したVitaphoneだ。
Vitaphoneの再生方法は、一般のレコードとちがっていた。一般のレコードは、ピックアップはディスク外周から内側にむかって進むが、Vitaphoneレコードはピックアップのスタート点をディスクの内側におき外側に向かって進む。なにか珍発明のようにみえるが、レコード再生に問題はない。
VitaphoneのようなSound-on-disc方式が成功しなかったことは、映画史から明らかだ。しかし、そこで採用された毎分33 1/3回転数は、その後のLPレコードで一般に普及し。さらに収録・再生をディスクの内側から外側に向けて進める方式は、デジタル時代のCDで採用されている。このようにみればSound-on-disc・Vitaphoneは、レコード史に記すべき項目のひとつだろう。
上記Youtube映像は、ワーナーブラザースが1927年にVitaphone方式で制作した映画”Jazz Singer”の一部。
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