新年はこの本から
新年最初の一冊は、「和菓子の京都」(川端道喜、岩波新書)。初版は1990年だが、アンコール復刊され現在も新刊で購入できる。新春にちなんで第二章「葩餅(はなびらもち)、肴から茶菓子へ」を読む。
花びらもちは茶道の初釜の菓子とされているが、いまはこの時季に町の和菓子屋の店頭でもみかける。薄い白い丸餅(固くなるのを避けるため求肥にしたものが多い)の上に薄い赤い菱餅をおき、そこにゴボウとミソ餡をおき、それらを包むように全体を二つ折りにした半円形の菓子だ。
この本では、花びらもちのルーツを宮中の正月に飾れた鏡餅からひもとき、宮中の包み雑煮を紹介。これは梅を象徴した薄い丸餅の上に赤い菱餅をのせ、さらにアユなどがのせられ酒の肴として供せられた。そのアユがいつしかゴボウに置換わり、宮中ではこれを御所で働く人々に開いた状態で配ったが、その場で食べたり持ち帰ったりするとき折りたたんで食べていたようだ。明治になり天皇が東京に移ると、宮中の菓子のいくつかが茶道家に供されるようになり、その代表格が花びらもちだとされている。
川端道喜は、450年を超える歴史をもつ京都の老舗和菓子屋だが、その語り口は気負ったとこがなく軽妙で分かりやすい。家に伝わる資料や自ら学んできたきたこと、それは菓子だけにとどまらず広く京都文化に及ぶ.。この本は新春にかぎらず京都に思いをめぐらすとき開きたい一冊だ。
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