手強いのが帰ってきた
夕闇まであとわずかとなる頃、木々の間に薄いピンク色のものがあることに気づいた。木を端から調べ正体を確認、ネムの花だ。
この木は、以前はたくさん花をつけ蜂やコガネムシがまわりを飛び回っていたが、ここ数年は花も虫も少なかった。それが一気に復活したように咲いている。再びネムの花を見られたことにほっとするとともに、あることが気になりはじめた。
学校に通っていたころ、早朝の路地で白黒まだらの蛾の大群をよく見かけた。蛾というと夜に活動するように思いがちだが、雨上がりの朝、まだ湿気が充満している空気のなかを、ふわふわと浮かぶように飛んでいた。その光景は、路地から生垣が消えるにつれて見ることはなくなった。
ところが先日、その蛾を見かけた。数匹だったが、まだら模様と飛び方でそれと分かった。かつての光景が帰ってきたのだ。しかし喜んでいられない。じつはあの蛾の繁殖力はとても強く、とくに幼虫は生垣の木々の葉をすべて食べつくし丸坊主にしてしまうほど。たぶん、どこかの植え込みでそのようなことが起きているかもしれない。ふわふわとしたやさしい飛び方に騙されてはいけない、あの蛾はなかなか手強いのだ。
| 固定リンク
コメント