ガラスのプロペラ(安西水丸)
「ガラスのプロペラ」(安西水丸、誠文堂新光社)は、あとがきに”デザインの自叙伝風エッセイのようなもの。子供の頃からおもっていたことや、感じていたことを素直に書いてみた”とあるように、子供の頃すごした千倉の話から、ニューヨークでデザインの仕事をしていたころ、さらに日本に戻ってきてからの活動を語っている。読みやすい文章に加えて、イラストが随所にあり見るだけでも楽しめる。
ところで安西水丸は人物のイラスト(似顔絵)も数多く描いているが、その似顔絵についてこんなことを書いていた。高校時代に似顔絵が苦手なことを友人に話したら、ブロマイドを買って練習するように勧められたとの話につづいて、”今だに似顔絵は上手くないが、この頃はむしろそっくりに描けない自分に誇りをもつようにしている。どうやらぼくに似顔絵を描かれた人たちは、気の毒がってむしろ向こうからぼくの絵に近づいてきてくれているようだ”と語り。村上春樹から「ぼくの顔、最近、水丸さんの描く絵に似てきちゃたみたいで」と言われたことを紹介している。これは作家とイラストレーターの関係を表したいい話だと思う。
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