ベストアルバムの罠
神保町にあった東京堂書店ふくろう店の記事を探していたら、坪内祐三がふくろう店古本棚のサポートをしていた話を見つけた。坪内祐三の日記本を調べたら、「本日記」(坪内祐三、本の雑誌社)の2004年2月21日にずばり”私このたび東京堂書店ふくろう店古本部をたんとうすることになりました”というタイトルで、その棚に収めるための古本探しや販売価格設定の仕組みを書いていた。
坪内祐三の「本日記」は、2001年7月から2005年10月までの日記を収録している。ところどころ拾い読みをしていたら、2001年8月15日、渋谷のHMVでビーチボーイズのベストアルバム「アイ・ラブ・ユー」を購入したとある。しかも”ビーチボーイズのベストは、すでにボックスセットを含めて五、六種類持っているのだが、九百九十円のお値打ち価格だし、曲順が「グッド・ヴァイブレーション」・・・”と収録曲名まで書いている。どうやら坪内祐三は、なかなかのビーチボーイズファンのようだ。
ところでベストアルバムの購入は、二つのタイプに分けられそうだ。一つ目はいわゆる初心者が、よく知らない歌手や奏者がどのような演奏スタイルか知るためだ。気に入れば、これをきっかに他のアルバムも聴いてみようかとなりアルバム購入の入り口となれば、その逆に、いやこの一枚で十分ということもある。
二つ目は、ベテランマニアの場合だ。これはなかなか一筋縄ではいかず、私の好きなあの曲はなぜ入っていないんだとか、曲順はこうじゃないだろうと、そこそこ知っているだけあってベストアルバムへの要求が高い。メーカーもそのあたりはお見通しで、未発表のテイクやライブ音源をボーナストラックとして追加し、これはこのベストアルバムでしか聴けませんと背中を押す。結局、ベテランマニアはメーカーの仕掛けたこの罠にはまり、似たようなベストアルバムをまた買ってしまうのだ。
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