八重咲雪中花
慌ただしい年末にぽっかりあいたスキマのような時間ができたので外出したら、どこか甘いがすっきりした香りがかすかに漂っていることに気づいた。この香りはもしやあれではと思いながらその源を探したら、写真の八重咲水仙にであった。
水仙には「雪中花」という和名がある。この雪中花という名は、冬に咲くスイセンの生態をじつにうまく表現していると思うが、なぜかあまり聞くことがない。ちょっと残念。
ところで冒頭に”甘いがすっきりした香り”と書いたが、水仙の香りを言葉で表すのはじつに難しい。バラの花のように強い甘い香りではないし、柑橘系の爽やかな香りとも違う。ヒヤシンスに似たグリーン系の香りだそうだが、そのヒヤシンスがどのような香りだったか思い浮かばず、グリーン系の香りは葉とか草のものとされているが、これは対象が広くてこれだと言いにくい。それでもスイセンの香りは、かすかでもそれと分かる。記憶の引き出しのなかには、花の香情報の箱もあるようだ。
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