そのクリスマスツリーはモミでないかも
身近にある樹木や草花について調べると、意外な事実に驚くことがある。いまの時季であれば、カエデとモミジの違いなどがよく話題に上がる。じつはこの二つは同じ樹木を指している。カエデは葉の形がカエルの手に似ていることからきた呼び名で、モミジは色づくことを表す「もみつ」からきた呼び名だそうだ。つまり葉の形か、葉が色づくことに着目するかの違いだ。しかし一般には、葉の切れ込みが浅いものをカエデ、深いものをモミジと呼ぶことが多い。
カエデとモミジの話はよく知られているが、”そのクリスマスツリーはモミではない”はどうだろうか。これは「植物と行事」(湯浅浩史、朝日選書)の「クリスマス植物の由来」に載っている話だが、”もともとヨーロッパモミは、ドイツ南部以西のヨーロッパに自生するが、北欧やイギリスには見られず”とある。つまりサンタクロースの故郷とされる北欧にはモミはないのだ。さらに”日本でモミとよばれてクリスマスツリーに使われているのはドイツトウヒ”とある。
植物分類上ではモミとドイツトウヒは同じマツ科だが、モミ属とトウヒ属と異なる。しかし樹形を見る限りではともに三角錐の形をしていて見分けがつかない。タネの形が違うので見分けられるそうだが、そのタネを見る機会がないとどうにもならない。
ところでナショナルジオグラフィックに「世界最古の生きた樹木」という記事がある。これはスウェーデンで発見されたドイツトウヒで、地上にある幹の樹齢は600年だが地中の根は9550年とされている。古い幹が死ぬと同じ根本から新たな幹が生える、それを繰り返すことでここまで生きてきたそうだ。我々が街中で見かけるクリスマスツリーは、このような不思議な生命力をもった木かもしれない。
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