レスポールは多重録音の先駆者でもあった
レス・ポールはギブソン社エレキギターのモデル名として知られるが、それは1950年代に活躍したギタリストの名前に由来する。そのことは本で読んでいたが、彼が録音技術の発展に貢献したことは知らなかった。
レス・ポールとメアリー・フォードが、どのように彼らのサウンドを創り出したかを紹介する映像がYoutubeにある。前半は面白コントのようだが、3分過ぎから制作過程のデモとなる。二台のテープレコーダーを駆使して、一台で再生しながらもう一台で録音し、それを繰り返すことで一つの作品に仕上げていく様子が分かる。いわゆる多重録音(オーバーダビング)による音作りだ。
多重録音は映画制作では古くから行われたようだが、レス・ポールは1947年に多重録による音楽レコードを制作している。このときはアセテートディスクを使用する自作録音機材で多重録音を行い、出来上がったレコードはキャピトル・レコードから販売された。テープレコーダーは1935年頃にドイツで発明され、第二次大戦中に使用されたとされている。これがMagnetophoneである。アメリカでも開発されたが、実用機が登場したのは第二次大戦後の1946/47年頃だそうだ。
1948年、自動車事故でケガをしたレス・ポールの元へビング・クロスビーからテープレコーダーAmpex300型が贈られた。再起したレス・ポールは歌手であり妻でもあったメアリー・フォードとともに1951年に「How High The Moon」をリリースし、これがミリオン・セラーとなった。Youtubeの映像(1953年)は、このヒットをうけてのものだろう。なお「How High The Moon」は、多重録音を12回行っていると言われている。
さらにレス・ポールは多重録音のためにAmpexに8Track仕様のテープレコーダーを特別注文した。このモデルはAmpex Custom 300-8型として1957年に完成、マルチトラック・テープレコーダーの始まりである。このようにレス・ポールはギターだけでなく、音楽録音に大きな功績のある人だった。
| 固定リンク
« 昼の月 | トップページ | これサクラですか? »
コメント