串田孫一「山歩きの愉しみ」を読む
我が家の読書週間二冊目は、串田孫一の「山歩きの楽しみ」(ランティエ叢書)を選んだ。
串田孫一の文章は雑誌で読んだことがあるが、一冊の本で読むのはこれが初めて。私が知るのは山に関するエッセイ作家としてだが、活動分野は、哲学、詩、随筆、翻訳、絵画、音楽、登山など多岐にわたり、いわゆる博学多才な人である。
「山歩きの愉しみ」は、若いころから山や自然に親しんだ串田ならではの作品。たとえば山の博物手帖という話の中に”植物や昆虫を、それについて詳しく書いてある本や図鑑によって、つき合わせ、確かめることは簡単なことではない。世間のいろいろのものが便利になった時に、人間が横着になってきていることは事実で、調べる根気も薄れている。この便利さに反抗するような気持ちを抱いていないと、自然の勉強は進められない”とある。
これはいつごろ書かれた話だろうと思いながら、巻末の初出一覧をみたら1966年とある。まだインターネットなど影も形もないころに書かれたものだが、この話は、すべてネット検索で済ましがちな現代にも通用するように思う。
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