開高健「冒険者と書斎」を読む
我が家の読書週間、六冊目は「冒険者と書斎」(開高健、ランティア叢書)。
開高健といえばサントリーウィスキーのTVCMや釣り紀行番組の中での姿から、書斎にどっしり座って執筆する小説家より、自ら現地へ飛び込む好奇心旺盛なオジサンという印象がある。「冒険者と書斎」は、1969年代末から1980年代に書かれたエッセイを集めたもので、開高らしい酒・釣り・旅などの楽しい話が並んでいる。
ところで、あのサントリーウィスキーのTV CMがYoutubeにあるかなと検索したら、CMに加えて、モンゴル、スコットランド紀行の映像が見つかった。スコットランドのものは追悼番組として編集されており、初めに略歴や活動が紹介され本編のスコットランド紀行につながる。
その映像の中にロンドンでフィッシュアンドチップスを10年ぶりに食べながら、”私の記憶にあるものに比べて美味くない・・・記憶が美しくしてしまったですね、色んなものをその後食べ過ぎて、知らなくてもいいことを知ったため、世の中が寂しくなる面白くなくなる、これを知恵の悲しみと言うんです”と語るシーンがある。
じつは私も、以前の勤め先近くにあった食堂の冷やし中華が美味くて、数年前にそれを思い出して食べに行ったら、あれこんなものだったかとなった。店の人も具材も変わっていないように見えたが、私の記憶にあった美味しさには及ばなかった。これが知恵の悲しみだったら開高健と同じだと自慢できるが、医者からは加齢による味覚低下でしょうとあっさり言われた。ちょっと残念である。
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