七時間半(獅子文六)を読む
「七時間半」(獅子文六)は、1960年(昭和35年)1月から9月まで週刊新潮に連載された小説。今回読んだのは、2015年発行の文庫復刊シリーズのもの。
この小説についてドタバタ喜劇とする話もあるが、ミステリとサスペンスのスパイスを加えたラブコメディ作品のような。舞台となるのは東京から大阪へ向かう特急列車「ちどり」、その中の食堂車で働くウェイトレスのサヨ子とコックの喜一の恋愛模様を中心に、そこに社長や学者やイケメンなど複数の男性から好意を寄せされる三代目ちどりガールの有女子(うめこ)がからんでくる。
乗車している首相を狙った不穏なうわさが広がるなか走り続ける列車、そこに怪しい若者二人組と金持ちらしき美人乗客が登場し、列車ミステリのような様相も加わる。はたしてサヨ子と喜一の運命はいかに、また有女子はどうなるのだろうか。
古さを感じさせないスピーディな話の展開は獅子文六ならでは、読者をまったくあきさせない。1961年監督川島雄三により映画化され「特急にっぽん」として公開されている。
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