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2023/01/14

「殿山泰司ベスト・エッセイ」を読む

 殿山泰司は、数多くの映画に出演した俳優であるとともにエッセイストとして多くの文章を残した。ちくま文庫からはかつて10冊ほど刊行されていたようだが、いま新刊書店で入手可能なのはこの「殿山泰司ベスト・エッセイ」だけ。

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 自らを三文役者と称した殿山泰司は、声がかかればどんな役でもするというだけあって、出演映画は300本を超えると言われ、またテレビでも活躍した。商店や町工場の主人などを演じるとぴったりはまり、いわゆる存在感のある記憶に残る脇役俳優だった。

 エッセイストとしての殿山泰司は、自身の生い立ちや兵隊生活、役者活動や映画人との交流話に加えて、ミステリ小説の書評を書いたり、またジャズを愛好しコンサートにも度々通いその演奏評を数多く残した。

 この本に収録された文章は、いずれもちょっとクセのある飾らぬ口調の文体で、ためらいがなく痛快でもある。はじめはその文体に戸惑ったが、いまであればSNSで炎上しそうな話をさらりと言ってのけるは羨ましいやら憎らしいやら、そこに不思議な魅力を感じる。

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