10月10日、門前仲町に深川東京モダン館がオープンしました。
写真をみて、この丸窓のある建物は、あれではと気づいた方もいるでしょう。じつは、この建物は昭和6年に建設され、「東京市深川食堂」として使われた昭和初期のモダン建築です。
戦後、職安や作業所と使用されていたものを、今回、完全に改修して観光案内+イベントスペースとしてオープン。十数年前に見かけたときは、暗いグレーの建物でしたが、今回の改修によりアイボリー系の明るい外装になりました。
「東京市食堂」とは見慣れない名前ですが、東京市が設置した公衆食堂です。米騒動に対する東京市の社会事業の一環として大正9年から神楽坂・上野などに設置されました。それらは関東大震災で一時消失しましたが、その後、震災復興事業として再開され、深川は最後の16番目のものです。
ところで、二階で行われている「深川東京モダン館の時代」に、建物設計図面、同時代の建物の写真、食堂の価格表など興味深いコピーが幾つか展示されています。
昭和6年3月11日付け東京市公報に掲載された食堂価格表によれば、定食甲種:(朝食10銭、昼食15銭、夕食15銭)、乙種:(朝食8銭、昼食10銭、夕食10銭)です。これらは現代のA定食、B定食でしょうか。興味深いのは、嗜好食として単品メニューがあり、サラダ、コロッケ(10銭)からはじまり、ビフテキ、ローストビーフ、玉子丼、カツ丼、天丼(20銭)、さらに洋食ランチ・和食ランチ(30-50銭)などがあります。
この価格表だけですと、はたして安いのか高いのか分かりませんので、手元にある本でこの頃の食べ物の値段を調べました。
銀座十二章(池田弥三郎)によれば、昭和5年10月に銀座で開店した”大衆向きの安いてんどんを主とした店”では天丼35銭、そのとき銀座三越食堂の天丼は40銭だそうです。また、たいめいけんよもやま噺(茂出木心護)によれば、昭和3年、泰明軒本店で昼の食事は50銭から1円20銭だそうです。
こうしてみると東京市食堂は、銀座のデパート食堂や食べ物屋さんの半額程度だったようです。
また新版大東京案内(今和次郎)では、”東京市社会事業のなかで評判のいいのは公衆食堂の事業”と記述しており、昭和三年の東京市設公衆食堂(真砂町、三味線堀、猿江、芝浦、九段、神楽坂、神田、大塚、上野)の成績表(利用者数と売り上げ金額)を掲載しています。
さて深川東京モダン館にもどりましょう。ここは門前仲町の駅に近く(徒歩3分)、観光パンフレットも置いてあります。いままで公共の観光施設が少なかった門仲付近ですが、深川散歩の待ち合わせ、一休みに便利なスポットができました。住所は、東京都江東区門前仲町1-19-15、赤札堂向かい側にあるモスバーガー横の道に入って、すぐ左側にみえる路地を入ったところです。
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